サマリー
− 実習用ExcelテンプレートCD−ROM付 − Bioreactors for Microbial, Animal and Plant Cell Cultures: Fundamentals of Design and Scale−Up With CD−ROM for Excel Exercise Templates
本書の特長
-
工業規模のバイオリアクター設計に関するコストの最適化のビジネス戦略とは!
-
近年、注目を集める、高濃度培養のための流加培養操作と灌流培養操作を詳述!
-
バイオリアクターを設計するための微生物の反応速度を基礎から学習する!
-
バイオリアクターの設計とスケールアップに失敗しない技術戦略を詳細に紹介!
-
動物細胞培養バイオリアクターと微生物培養バイオリアクターを比較した!
-
回分操作、連続操作、半回分操作(流加培養)の利点と欠点をまとめた!
-
バイオリアクターについての全48計算問題のExcelテンプレート付!
|
はじめに
バイオリアクターは伝統ある発酵(バイオ)産業の心臓部である。しかし、産業界には「職人芸」、「秘伝」と神秘的な雰囲気の他に秘密主義もありバイオリアクターについての情報は非常に限定されている。先人の知識の蓄積である経験は大事であるが、その経験をただ伝えるのではなく、その根拠を解析し定量化することによりさらなる展開が可能となる。
情報がほとんど得られない他社のことは置いておいて、自社あるいは自分の部署ではバイオプロセスの諸現象を解析し定量化した情報を共有しておく必要がある。AIによるベテランの知識・経験の形式知化(文章・計算式・図表などで説明できるようにすること)が進んでいる。バイオリアクターの設計・スケールアップについてはサイエンスだけではなくエンジニアリングのセンスも必要である。
微生物や動植物細胞などの生物細胞の培養は液体培養と固体培養に大別されるが、本書では主に液体培養について解説する。
第1章では、バイオプロセスにおけるバイオリアクターの概要について解説した。第2章では、バイオリアクターの設計の基礎となる生物反応速度論について解説した。第3章では、バイオリアクター操作法について解説した。バイオプロセスで広く使われている流加培養操作と灌流培養操作について例題を含めて解説した。第4章では、バイオリアクターの設計計算法について代表的なバイオリアクターである撹拌槽および気泡塔の設計計算に使う相関式を含めて解説した。実際の設計計算について例題を使って具体的に解説した。第5章では、撹拌槽および気泡塔バイオリアクターのスケールアップの手法と実際のスケールアップ計算について解説した。第6章では、代表的なバイオリアクターの操作と設計およびスケールアップにおけるトラブルについて解説した。特に非ニュートン特性および泡沫層の形成について解説した。第7章では、今後のバイオリアクターの展開について解説した。付録では、Excelを使った問題を解く際に使用するExcelの便利なツールであるゴールシークとソルバーの使い方について簡単な例題を使って解説した。
Excelによる設計・スケールアップ計算の例題を付けて分かり易く解説したので、添付してあるCD−ROMに収められているExcelテンプレートファイルを使い実習することにより理解を深めて頂きたい。テンプレートには実習シートの他に解答シートが付いているので、それを参照にしながら実習し本書の内容を具体的に理解できるようになっている。テンプレートは是非実務にも使って頂きたい。
著 者:川瀬 義矩(東洋大学 理工学部 名誉教授)
ページTOPに戻る
目次
第1章 バイオリアクターの基礎
1. バイオプロセス
1.1 生産目的に適したバイオリアクター
1.2 微生物、動物細胞、植物細胞の培養
2. バイオリアクターの実例
2.1 微生物培養バイオリアクター
2.2 動物細胞培養バイオリアクター
2.3 植物細胞培養バイオリアクター
2.4 固定化生体触媒バイオリアクター
2.5 嫌気バイオリアクター
2.6 固体培養バイオリアクター
引用文献
第2章 微生物の反応速度の基礎
1. 酵素反応の反応速度
1.1 ミカエリス・メンテン式
1.2 ラインウィーバー・バークプロット
2. 微生物反応の反応速度
2.1 反応速度式
2.2 基質消費速度
2.3 酸素消費速度
2.4 代謝産物生成速度
3. 阻害反応
3.1 酵素反応の阻害
3.2 細胞増殖の阻害
4. 反応速度定数の決定
5. 固定化酵素、固定化微生物の反応速度
6. 発酵熱
6.1 反応速度定数と温度
6.2 発酵熱の計算
引用文献
第3章 バイオリアクターの操作の基礎
1. バイオリアクターの操作方式
2. 回分操作
3. 反復回分操作
4. 流加培養(半回分操作)
5. 連続操作
5.1 ケモスタット
5.2 連続操作バイオリアクターの設計式
5.3 灌流操作(リサイクル流のあるケモスタット)
6. 実際の混合
引用文献
第4章 バイオリアクターの設計の基礎と実践
1. バイオリアクター設計の要件
2. 撹拌槽バイオリアクターの設計
2.1 撹拌所要動力
2.2 混合時間
2.3 吐出流量(循環流量)
2.4 通気:気体分散
2.5 設計パラメーター
2.6 設計計算例
3. 気泡塔バイオリアクターの設計
3.1 撹拌動力
3.2 混合時間
3.3 混合拡散係数、液流速
3.4 設計パラメーター
3.5 設計計算例
4. エアリフトバイオリアクターの設計
4.1 撹拌動力
4.2 混合時間
4.3 混合拡散係数、液流速
4.4 設計パラメーター
4.5 設計計算例
5. 固定化酵素/微生物バイオリアクターの設計
引用文献
第5章 バイオリアクターのスケールアップの基礎と実践
1. 撹拌槽型バイオリアクターのスケールアップ
1.1 スケールアップのパラメーター
1.2 相似則
2. 気泡塔バイオリアクターのスケールアップ
3. エアリフトバイオリアクターのスケールアップ
4. CFD(数値流体力学)による流動解析の利用
4.1 撹拌槽バイオリアクターのCFD
4.2 気泡塔バイオリアクターのCFD
4.3 エアリフトバイオリアクターのCFD
引用文献
第6章 バイオリアクターの設計・スケールアップにおけるトラブル解決
1. バイオリアクターのトラブルを解決する戦略
1.1 高粘度/非ニュートン流体培養液の混合
1.2 泡沫層の形成
1.2.1 泡沫層高さ
1.2.2 破泡
2. バイオリアクターの設計とスケールアップに失敗しない戦略
引用文献
第7章 サスティナブルバイオリアクターの展開
1. プロセス強化
2. バイオリアクターの最適化
2.1 省エネルギー
2.2 低コスト化
2.3 最適化
3. シングルユースバイオリアクター
4. バイオリファイナリー
4.1 微細藻類培養
4.2 バイオ水素生産
4.3 バイオメタネーション
5. バイオリアクターとAI
引用文献
付録 Excelゴールシークとソルバーの使い方
1. 収束計算の設定
2. ゴールシークの使い方
3. ソルバーの使い方
3.1 ソルバーのアドイン
3.2 ソルバーのオプションの設定
索引