脚本家と俳優のストライキの影響
脚本家を代表するWGAと俳優を代表するSAG-AFTRAはスタジオとの労働契約に合意出来なく、脚本家は5月2日、俳優は7月14日にストライキ入をした。脚本家のストライキは9月27日で終わり、俳優のストライキは11月9日まで続いた。脚本化がストライクに入った時点で、脚本が完了していたドラマでも、制作中に書き直し等があり、脚本家無しの制作は困難である。さらに、脚本家がピケットを張っているスタジオには俳優を含む、他の労使組合のメンバーも入らないので、実質上、5月2日から11月9日の6ヶ月間、映画とテレビドラマの制作はストップしていた。
アメリカのテレビ・シーズンは9月開始だが、今年はドラマ無しでスタートすることになった。TVネットワークは春に放送予定であったドラマを保留し、秋にリリースする、あるいはストリーミング向けに制作されたドラマを放送でも流すことで、いくつかのドラマを放送しているが、プレミアムタイムの主体はリアリティ番組とスポーツである。
しかし、テレビ視聴時間に占める地上波の割合は10月では23.6%で、9月の23%から増えている。多チャンネル向け番組は29.8%から29.5%に減り、ストリーミングは37.5%から36.6%に減り、地上波がシェアだけを増やした。
新しいドラマ番組が無くても地上波が増えたのは、これまででは多チャンネルで放送していた試合を、今年は地上波でも放送しているためである。例えば、DisneyのNFLのMonday Night FootballはこれまではESPNでの放送であったが、今年はABCでも放送している。地上波に占めるスポーツの視聴時間は昨年の10月では25%であったのが、今年は30%に増えている。
スポーツを増やしたことで、難を逃れているが、ストライキの影響はある。多チャンネル向けの試合を地上でも放送することで、多チャンネルの視聴は減る。新しいドラマは放送では見られないので、ドラマを見たい人はストリーミングの利用を増やしている。既存型多チャンネルサービス(ケーブルTVと衛星)の加入者はQ3では169万世帯減った。逆にNetflixのアメリカ/カナダの加入者数はQ3で175万人増えている。
放送ドラマの制作は可能になったが、スケジュールの調整等の理由でまだ開始出来て無い番組もある。ドラマを放送開始が出来るのは来年になる。また、キャンセルされたドラマもあり、数も少なくなる。地上波ネットワークはスポーツで1月頃まで持たせ、2月、あるいは3月にドラマの放送を再開することを予定している。
しかし、ストリーミングに移っている視聴者が放送ドラマに戻らない可能性もある。10月の地上波視聴時間に占めるドラマの割合は18%で、前年の27%から大きくと減っている。すでに、ドラマは放送で見るのではなく、見たい時にオンデマンドで見る人達が増えおり、ストライクはこのトレンドをさら進めることになる。