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CTV視聴時間と広告収入のねじれ

CTV視聴時間と広告収入のねじれ

スマートTV向けの自動コンテンツ認識(ACR)のベンダーで、その技術を使いスマートTVでの視聴データも提供しているInscapeによると、2023年Q2のテレビ視聴時間に占めるストリーミングのシェアは53.8%に達した。多チャンネルサービスでの視聴は37.1%、地上波受信は3.7%で、残り5.4%はテレビでゲームをしている時間である。2021年Q2では多チャンネルサービスが46.9%、地上波が4.2%で放送の合計が50%を超えており、ストリーミングのシェアは44.1%であった。

しかし、eMarketerによる2023年の広告収入の予測では放送広告は$613.1億、CTV広告は250.9億で、CTV広告の規模は放送広告の40%程度でしかない。視聴時間ではCTVでのストリーミング視聴は放送視聴を追い抜いたが、広告収入ではまだ半分にも達していない。CTV広告は2021年では$173億であったので、2年で倍増しているが、まだ潜在的規模からは程遠い。

CTV広告のねじれはデジタルデバイスの世界でもある。デジタルデバイス利用時間ではモバイル端末が50.7%でトップ、CTVは25.3%で2位、その他は24%となっている。しかし、デジタル広告に占めるシェアではモバイル端末は65.6%のシェアがあり、その他が24.9%で2位、CTVはたったの9.5%でしかない。

CTV広告収入が少ないのはストリーミング・ビデオの収入モデルはこれまでは殆どがSVODであったことだ。最近になり、Pluto TV、Tubi、Roku Channel、Amazon Freevee等のAVOD/FASTが急成長し、また、主要なSVODすべてに広告付きプランが登場しているが、広告事業としては新しい。広告主側にもCTV広告はデジタル広告であるのか、放送広告であるのかの戸惑いもある。

CTV広告を放送広告として見る場合、放送とストリーミング視聴と一緒に計ることで出来ないのが大きな問題である。Nielsenが行っている既存の放送視聴率調査にはNetflix等は含まれていない。Netflix等は独自に視聴データを出しているが、調査方法も、データのソースも異なり、Nielsenの視聴率を一緒に見ることは出来ない。スポンサーとして、CTV広告を放送広告の予算から出すのであれば、放送広告と同じ単位で視聴者数と効果を計る必要がある。

これまで使われてきた放送広告の視聴データのNielsenのC3とC7はこの9月からの放送期が最後になり、来年9月からの放送期では新しい単位(カレンシー)が使われることになる。新しいカレンシーはパネル調査ではなく、スマートTVからのビッグデータを使い、媒体が放送でも、ストリーミングでも同じように測定をすることが出来る。

しかし、新しいカレンシーは1社独占ではなく、複数カレンシーが使われることになる。新しいカレンシーとしてはNielsenのNielsen Oneに加え、iSpot.tv、VideoAmp、Comscore等がある。これまでの放送広告カレンシーがリタイアされ、ストリーミング視聴も計る新しいカレンシーに移行することはCTV広告には良いことである。しかし、新しいカレンシーへの移行、それに複数のカレンシーの存在は広告主を悩ませることになる。

 

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