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脚本家と俳優のダブルストライキ

脚本家と俳優のダブルストライキ

脚本家を代表するWriters Guild of America(WGA)、それに映画とTV俳優を代表するScreen Actors Guild – American Federation of Television and Radio Artists (SAG-AFTRA)はスタジオを代表する Alliance of Motion Picture and Television Producers (AMPTP)との次の3年間の雇用条件に合意出来なく、ストライキに入っている。これは映画、放送、ストリーミング市場に大きな影響を与えている。

脚本家は5月2日からストライキ入りをしている。脚本家がストライキしても、脚本が完了している作品の制作は可能だが、WGAメンバーがピケを張っているスタジオには他の労働組合メンバーは入らないので、制作には遅れが出ていた。これに加え、俳優もストライキに入ったことで、AMPTPに属さない独立プロダクション等の一部の作品以外の映画とTV/ストリーミング向け番組の制作は完全にストップしている。

WGAの最初のストライキは1960年で、作品の再放送からの支払いを求め、22週間続いた。2007年のWGAのストライキはDVDとストリーミングでの再利用料が争点で、2007年の11月に始まり、解決したのは翌年の2月であった。今回のストライキの争点の1つも再利用料である。これまでは映画、あるいはTV番組が再放送、あるいはDVD化された時に再利用料を得る事が出来た。しかし、ストリーミング向けのコンテンツはリリースされてから長い期間ライブラリーにあり、明確な再利用の仕組みが無い。

ストリーミング向けオリジナルの場合、一定の期間の配信は出演料に含まれて、再利用料は殆ど無い。ストリーミングにより、テレビでの再放送、あるいはDVDの化が減っているので、再利用収入はほぼ無くなっている。出演料は一定なので、作品がヒットしても、その収入のシェアは無い。組合側はレベニューシェアを求めているが、AMPTPは拒否している。

もう1つの大きな争点はAIの利用である。生成AIは脚本家と俳優の仕事を奪う可能性がある。WGA、SAG-AFTRA共に明確なAIの規定を作り、人間の仕事を奪わないことを保証し、AIを利用した場合でも組合員が賃金を得られるようにすることを求めている。AMPTPの考えは大きく異なる。例えば、エキストラのデジタル化の場合であれば、スタジオは最初に半日の賃金を払い、そのデータをベースにしたレプリカは俳優の承諾なしに永久的に使える権利を求めている。

生成AIはまだスタートしたばかりであり、その規定を決めることは困難であり、この解決は簡単ではない。アメリカのテレビのシーズンは9月から始まる。新番組の制作を間に合わせるのはほぼ不可能である。イギリス、フランス等の俳優の組合もストライキを支持し、アメリカのスタジオからの仕事は受けないので、海外での制作も困難である。

ネットワークはストリーミング向けコンテンツの利用、あるいは脚本家と俳優が不要なリアリーティ番組で乗り切ろうとしている。しかし、成功してきた番組の新シリーズ無しでは、視聴者は減り、放送離れは加速化する。

ストライキはストリーミングサービスにも影響を与える。以前から海外制作を増やしてきたNetflixは豊富な海外からのコンテンツがあり、ストライキの影響は少ないと言っている。しかし、いくら「Squid Game」のようなヒット作品があっても、ハリウッドのコンテンツ無しで視聴者を満足させ続けるのは困難である。WGAとSAG-AFTRAのストライキの長期化はビデオ・エンターテインメント市場に大きなインパクトを与える。

 

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