NetflixとDisneyの広告付きSVOD戦略の違い
Amazon Prime VideoとApple TV+を除く、全てのSVODサービスに広告付きプランが加わっている。特に、昨年末に広告付きプランを開始したNetflixとDisney+が注目されているが、2つのサービスの広告に対するアプローチは大きく異なる。
Netflixの狙いは新規加入者を見つけることである。アメリカ/カナダでは飽和間近であり、値段が安い広告付きプランを加えることで、新たな加入者を得るようとしている。既存の加入者を広告付きプランに移行させ、広告収入を得ることが目的ではない。Netflixの広告付きプラン(Basic with Ads)はこれまででは最も安かったBasicよりも$3低い、$7で提供している。既存利用者の多くはStandard、あるいはPremiumプランを使っているが、それらには広告付きオプションは無く、既存の利用者が広告付きプランに移行する可能性を低くしている。
Netflixとは違い、DisneyのDTC事業は赤字である。2022年のNetflixの収益は$45億あったが、DisneyのDTC事業は2022年では$44億の赤字であった。Disneyの最優先事項はDTC事業から収益を出すことである。それには低価格のプランで加入者を増やすのではなく、既存の加入者からのARPUを増やすことが求められる。Disney+の料金は$3値上げされ、$11となった。それに代わり、広告付きプランが$8での提供になる。Disney+の加入者がこれまで通りの料金で使い続けるためには広告付きプランに乗り換える必要がある。
SVOD加入者の調査をしているAntenna社の統計では両者の戦略は思惑通りの進歩をしている。NetflixのBasic with Adsへの加入者の殆どは全くの新規、あるいは以前の利用者のカムバックであり、既存加入者の乗り換えは殆ど無い。そのため、広告付き加入者数の増加は遅い。サービスが開始した2022年11月にNetflixに加入した人の内、Basic with Adsを選んだ人の率は9%であった。12月に15%となり、3ヶ月後の1月で19%であった。
対して、Disney+の広告付きプランへの加入者は急速に増えている。サービスがスタートした12月で広告付きのDisney+ Basicの単体での加入、あるいはBasicが含まれたバンドルへの加入は全体の19%であった。1月には27%になり、開始3ヶ月後の2月では36%と、全体の3分の1を占めている。新規加入者よりも、乗り換えが多い。
Antennaによると、2月時点でNetflixのアメリカ/カナダでの加入者に占めるBasic with Adsの加入者の率はまだ1%でしかない。Q4でのアメリカ/カナダでのNetflixへの加入者数は7429万人であったので、1%だと約75万人が広告付きNetflixに加入していることになる。Disney+でBasicへの加入者は、Netflixより多く、全体の3%になっている。アメリカ/カナダでのDisney+への加入者はQ4で4660万人であったので、すでにNetflixの倍近い140万人がDisney+ Basicに加入していることになる。
Disneyのもう1つのSVODサービスのHuluは以前から広告付きプランがあり、AntennaによるとHulu全体の57%がこれに加入している。HuluのQ4での加入者数は4800万人なので、約2700万が広告付きプランに加入していることになる。広告付きSVODサービスではDisneyが最大である。