NetflixはなぜMicrosoftをパートナーに選んだか
Disney+とNetflixが共に広告付きサービスを開始するが、スタートラインは全く異なる。Disneyは放送広告に関して豊富な経験があるのに対して、Netflixはゼロからのスタートになる。Netflixは加入者の視聴嗜好に関するデータはあるが、必ずしも広告に結びつくものではない。
Netflixが広告のノーハウと技術を得るのには3つの方法がある。1つは人を雇い、広告部門をスタートすることだが、これは時間がかかる。買収が2つ目の手であるが、適切な買収先を見つける知識が事前に必要になる。どちらも数ヶ月後にサービスを開始するのには間に合わない。
3つ目のパートナーが現実的な手段で、NetflixはComcast、Google等と会話をしいると報じられた。Comcastには豊富な放送広告のノーハウがあり、Googleはデジタル広告では最大の会社であり、どちらでも十分な資格はある。問題はGoogleはYouTubeを持ち、ComcastにはPeacockがあり、OTTサービスでは競合することである。これらと長期的なパートナーになることは不可能である。
Microsoftの広告規模はGoogle、Metaと比べると低いが、2021年では$78億あった。2022年Q1の広告売上は前年同期から20%増えた$29億になっている。Microsoft自体には放送広告の経験は無いが、2022年6月にAT&Tの広告事業のXandrを買収している。XandrはAT&Tが買収したデジタル広告プラットフォームのAppNexusとTV向けのプログラマティック広告技術のClypdをベースにした会社でWarnerMedia等の広告を販売していたが、WarnerMediaのスピンオフの時点で売却された。
MicrosoftにはOTTビデオ・サービスはなく、Netflixとはの競合はない。NetflixとMicrosoftの契約内容は公開されていないが、Comcast、Google等を選ばなかったのは、Netflixは単に広告在庫を売ってもらう会社ではなく、広告事業でパートナーシップを組める、長期的なアライアンス関係を求めていためと推測出来る。
広告販売だけでもNetflixの視聴者データ、それにMicrosoftのBingからの検索データを統合することはお互いの媒体価値を高めるメリットがある。また、Netflixはゲームに積極的になっており、Microsoftのゲーム事業とのシナジーもある。MicrosoftはXboxのサブスクリプション・ビジネスを拡大しようとしており、Netflixのサブスクリプション・サービスとのバンドルの可能性もある。
さらに、クラウドサービスでの協力の可能性もある。Netflixの現在のクラウドサービスのパートナーはAWSである。AmazonはSVOD分野ではNetflixの最大の競合でもあり、AWSのクラウドは使っているが、主要なソフトウェアはNetflixが開発し、Amazonのソリューションは使っていない。NetflixがAWSからAzureに乗り換える可能性もある。MicrosoftとしてもNetflixをAzureのクライアントに出来れば、放送/ストリーミング業界での地位を大きく向上させることが出来る。