急速に増えている広告付きVODの視聴
これまでストリーミング・ビデオのビジネスモデルは広告無しのサブスクリプションベースが主体であった。Huluには広告無しと広告付きの2つのプランがあるが、それ以外の殆どのサービスはNetflixと同じに広告無しであった。しかし、状況は急速に変化しており、広告付きのストリーミング・サービスの利用が大きくと増えている。
テレビ広告のエンゲージメント調査を行っているTVisionが発表したコネクテッドTV(CTV)での視聴動向報告の「The State of CTV: December 2021」(https://bit.ly/3J97gob)によると、2021年Q3に広告付きVODの視聴がSVODを上回った。同社の調査では2021年Q1では2歳以上の視聴者によるコネクテッドTV(CTV)での視聴時間に占めるSVODと広告付きVODのシェアはどちらも35%であった(残り30%はvMVPDとその他)。それが、Q3ではSVODが32%に落ち、広告付きVODが 38%に増えている。
広告付きVODには無料のTubi、Roku Channel、Pluto TV等のAVOD/FASTサービスとHulu等のような広告付きSVODの2つがある。AVOD/FASTの利用者は急激に増えている。これまでの無料のVODサービスは古いコンテンツが殆どで、面白くなかった。しかし、FoxのTubi買収、それにViacomCBSのPluto TV買収でコンテンツ事業者が参入し、さらにストリーミング・プレーヤではトップベンダーのRokuがRoku Channelを始めた事でAVOD/FASTに新しいコンテンツが増えただけでなく、オリジナル・コンテンツも加わり、魅力的になっている。
もう1つ、広告が付く代わりに料金が安くなるSVODサービスが多くなっていることも、広告付きVODの視聴が増えている理由である。大手コンテンツ事業者によるDirect to Consumerサービスの内、広告付きプランが無いのはDisney+だけであり、HBO Max(WarnerMedia)、Peacock(NBCUniversal)、Paramount+(ViacomCBS)、Discovery+(Discovery)にはすべて広告付きのプランがある。TVisionによると視聴時間のシェアが多いストリーミング・サービスのトップ5はNetflix(SVOD)、YouTube(AVOD)、Hulu(広告付きSVOD)、Amazon Prime Video(SVOD)、それにSling TV(vMVPD)で、2つのサービスが広告付きVODになっている。
広告付きVODが増えているが、広告主はテレビ広告とは異なる。広告に最も金を使っている業界は小売りで、2位から5位までは通信、一般サービス業、自動車、医療/健康である。これに対して、CTVでの広告が多い業界はエンターテイメントが24%のシェアで1位、後は金融/法律(12%)、健康(11%)小売(9%)、アパレル(8%)となっている。CTV視聴者はインターネットのヘビーユーザでもあり、ウェブ(あるいはアプリ)で提供される事業の宣伝が多くなる。また、エンターテイメント分野が多いのは、広告在庫の売れ残りを同じ系列のサービスの宣伝に使っているからだと推測される。