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映画業界の回復とPVOD

映画業界の回復とPVOD

 

パンダミックにより映画館が閉鎖されたことで、2020年のアメリカ国内の映画興行収入は大きく減り、$20.5億であった。これは、前年の$112.6億の18%でしかなかった。Universalの「Trolls World Tour」、Disneyの「Mulan」等が視聴料$30のPremium Video on Demand(PVOD)として配信され、新たな収入が生まれたが、Covid-19が映画業界に与えたダメージは大きかった。

 

映画館は9月頃から再開が始まり、9月4日に公開になったWarner Brothersの「Tenet」がオープニングの週で$2020万の売上を達成して以来、徐々に回復が始まっている。7月9日の週にリリースされたDisneyの「Black Widow」は1週間で$8000万の興行売上があり、その週全体の興行売上は$1.17億となり、パンダミック以後、初めて$1億を超えた週になった。しかし、2021年の売上はまだ$14.61億でしかなく、回復からは程遠い。

 

Black Widowは国内での$8000万の売上に加え、海外では$7800万の売上があり、最初の週で$1.58億の興行収入があった。Black Widowはまた、Disney+上でPVODとしても配信され、Disneyによると$6000万以上の売上があったので、全体では$2億の売上となった。

 

PVODでの売上が公式に発表されたことはこれが最初である。$8000万の劇場での売上に加え、PVODでも$6000万の収入があったことで、PVODの可能性が認められ始めている。映画スタジオが劇場売上から得られる収入は50%程度であるのに対して、PVODではサードパーティーのプラットフォームを使い、コミッションを支払っても80%は得られる。Black Widowであれば、Disneyの国内の劇場からの収入は$4000万、PVODからは$4800万で、DisneyとしてはPVODからの方が収入が多かったことになる。

 

PVODはスタジオ側の儲けになるが、劇場側には減収となる。Black WidowのPVODで$6000万の売上があったことは200万世帯が利用したことになる。1世帯で平均3人が視聴したとして、600万人が劇場に行かなかった事となる。チケットの平均価格を$9として、劇場から$5400万の売上を奪ったことになる。

 

当然、映画館はPVODには批判的である。劇場を代表するNational Association of Theater Owners(NATO)はBlack Widowの2週目の興行売上が67%減収した事を理由にBlack Widowが興行的な失敗であったと酷評している。NATOはDisneyがBlack WidowをPVODで配信したことで、2週目の大きな売上の機会を逃したと批判している。しかし、6月25日に公開になった「F9: The Fast Saga」はPVODされていないが、2週目の売上は同様に67%の減少があったので、2週目にBlack Widowの観客が減った事をPVODだけの責任にすることは出来ない。

 

劇場側がいくら批判してもPVODが無くなることはない。スタジオに取り、PVODの方が儲かるだけでなく、誰が視聴したかのデータも得られるなど、大きなメリットがある。数年後には映画業界としての売上はパンダミック以前の規模に戻るかも知れない。しかし、テレビ放送がOTTサービスに視聴者を奪われたように、映画のDirect to Consumer化も進み出しており、劇場の売上がパンダミック以前の規模に回復することは無いであろう。

 

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