新作映画のOTT配信
先月の記事でWarnerMediaが2021年に公開するすべての映画が映画館と同時にHBO Maxで配信になることに関して書いていた。AT&Tの作戦は成功をしているようで、Apptopiaによると「Wonder Woman 1984」が公開になった12月25日の前日と同日だけで、55.4万回のダウンロードがあった。調査会社のKantarによるとHBO Maxが12月に最も新規加入者を得たSVODサービスになっている。Q4の新しいSVOD加入者の20%はHBO Maxへの加入であった。
新作映画のOTTでの配信はCOVID-19により始まり、最初に行ったのはNBCUniversalで、4月に「Trolls Word Tour」を$20のPVOD(Premium Video on Demand)として公開した。映画を配信したAmazon Prime、Fandango、Apple TV、Vudo、YouTube等のすべてのプラットフォームで1位に入り、IndieWireの推定では公開から4ヶ月間で$1.5億の収入をもたらし、「Mulan」を配信するまでは最も成功したPVODとなった。
その後、Apple TV+が「Greyhound」、Disney+が「Hamilton」を配信する等、様々な映画が映画館での公開を待たずにOTTで配信された。9月にはDisney+が「Mulan」を$30のPVODとして公開し、$2.7億の収入を得たと推測されている。しかし、すべての映画がOTTでの公開にはなっていない。「No Time to Die」のように大ヒットになると予想されている映画は映画館での公開が可能になるのを待っている。
2021年のすべての映画をHBO Maxで配信することを決定しているWarnerMediaも2022年からは映画館での公開に戻す予定である。「Trolls Word Tour」と「Mulan」は成功したが、失敗であったPVODもあり、リスクもある。NielsenはPVODの視聴調査を開始し、視聴された回数だけでなく、年齢、性別、地域、人種等の詳細なデータも提供することで、今後につながる分析を可能にしようとしている。しかし、スタジオはCOVID-19が終局すれば、映画館での公開に戻りたいと考えている。
だが、元には戻れない可能性もある。これまで、SVODはTV番組(シリーズ物)が主体であったのが、Disney、WarnerMedia等の大手コンテンツ事業者のSVOD参入、それにCOVID-19により、映画も重要なコンテンツになっている。Disney、HBO Max等の挑戦を受け、Netflixは1年に71本の映画を制作し、毎週に1本以上を公開している予定を発表している。WarnerMediaが映画館での公開に戻りたくても、Netflixと競合するためにはHBO Maxでの公開を止められなくなる可能性もある。
視聴はどちらを好んでいるのか。Parks Associatesの調査では新作映画をどのように視聴することを好むかの質問に対して、映画館と答えたのは24%であったのに対してオンデマンドは46%(SVODの25%、TVODの11%、多チャンネルサービスのVODの10%の合計)で、30%は特に好みは無かった。オンデマンドが映画館の2倍近くになっている背景にはCOVID-19があり、終局すれば異なる結果になるかも知れない。しかし、家で映画を見ることになれた人たちは映画館には戻らない可能性も高く、このまま、映画もOTTでの配信が普通になって行くかも知れない。