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NBCとその加盟局の対立

NBCとその加盟局の対立

(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.194)

2020年7月20日

アメリカのテレビネットワークは春にUpfront呼ばれるイベントにスポンサーを集め、秋からの新シーズン番組を公開し、広告枠の前売りしている。今年はCOVID-19の影響で、Upfrontは開催出来なく、オンラインで行われた。しかし、経済状況は不明瞭で広告の売れ行きは鈍い。NBCUniversalは秋の番組宣伝のために、特別Upfrontとして2013年まで7シーズン続いたヒット番組の「30 Rock」のキャストを集め、特別番組を作った。通常のUpfrontはB2Bで一般は参加出来ないが、この番組はスポンサーに公開された後、NBCが放送した。

 

しかし、NBC加盟局の殆どはこの番組をボイコットした。NBCが保有している局のあるニューユーク、ロサンゼルス等の大都市では放送されたが、加盟局の地域では「30 Rock One Time Special」は放送されなかった。秋の新シーズンのプロモーションになる番組を加盟局がボイコットしたのは、これをNBCUniversalの新しいストリーミングビデオサービスのPeacockの宣伝と見なしたからである。

 

DisneyのDisney+、WarnerMediaのHBO Max等と同様に、PeacockはTVネットワークによる視聴者への直接配信であるが、他のDirect-to-Consumerのストリーミングサービス以上に放送離れを加速化させる内容になっている。Disney+にはABCの番組はなく、WarnerMediaは地上波ネットワークは持っていない。CBS All Accessは全米でCBSの同時配信をしていえるが、売上は加盟局とシェアしている。これに対して、PeacockはNBCの番組を主体にし、放送とは異なる構成であるが、複数のリニアチャンネルがあり、放送局はPeacockに視聴者が奪われる事を警戒している。

 

加盟局が30 Rockの特別番組を放送しなくても、NBCUniversalはこれをBravo等の自社の多チャンネル向けネットワークで放送し、さらにNBC.com、それにPeacockでオンデマンド配信をするので打撃は無い。逆にボイコットのおかげで、この番組が話題になり、視聴者が増えたかも知れない。

 

NBCUniversalに対するボイコットはこれだけではない。アメリカ最大の映画館チェーンのAMC EntertainmentはUniversalの映画のボイコットを発表している。COVID-19で劇場映画が閉鎖されている中、NBCUniversalは「Trolls World」を映画館で上映しないで、すぐにTVODで配信した。AMCはNBCUniversal、それに他のスタジオがCOVID-19後も映画館をスキップし、ストリーミングで配信し始めることを恐れている。

 

しかし、加盟局、それに映画館のNBCUniversalのボイコットはDirect-to-Consumerの動きを加速化するだけである。消費者が求めているのは娯楽で、それを可能にているにはコンテンツである。テレビ放送、映画館があってもコンテンツ無しでは娯楽にはならない。ボイコットにより放送局、映画館からコンテンツが消えれば、ストリーミングでの視聴が増えるだけのことである。

 

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