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「ムーン・アズ・ア・サービス」ビジネスモデル:商業宇宙プレイヤーにとっての次の飛躍

“政府・軍事分野の顧客向けの「As-a-service」ビジネスモデルが、月市場における商業プレーヤーの需要を牽引する”

NASAは、月地形車両(LTV)の開発にIntuitive Machines社、Lunar Outpost社、Venturi Astrolab社を選定し、「as-a-service」取得モデルを採用している。このアプローチは、無期限納入/無期限数量、マイルストーンベースの契約枠組みに包含され、LTVの全受注額で46億米ドルの潜在的価値を誇り、将来の月面探査の大胆な前例となる。アルテミス計画における予算超過や遅延の歴史的背景の中で、固定価格タスクオーダーへのこの戦略的転換は、「MaaS(moon-as-a-service)」ビジネスモデルを促進する一方で、財政の不確実性を軽減することへのNASAのコミットメントを意味する。このモデルは、スケーラブルで費用対効果の高い月面アクセスを約束するものであり、月面市場における商業機会の最前線に立つものである。

月のビジネスチャンスは政府と軍の需要に支えられている
政府と軍事組織は、商業団体による「as-a-service」モデルに対する需要の主な原動力となるだろう。これらのモデルは、開発段階と拡張サービス提供のコストを最適化することができる。しかし、月の市場環境は2029年以降、特にアルテミス有人ミッションの成功が期待された後に変化すると予想される。その時点で、ミッションの焦点はインフラ整備と原位置での資源利用に移るだろう。この移行は、商業主体にとって極めて重要な瞬間となる。資源の利用可能性や、サンプル・リターン・ミッションからの洞察によって拍車がかかる資源抽出への関心の高まりによって、ビジネスチャンスが生まれるだろう。

アナリシスメイソンの最新レポート「月市場」第4版では、2023年から2033年の間に450以上のミッションが打ち上げられ、累計1,510億米ドルの収益を生み出すと予測している(図1)。

図1:月市場、ミッションとセグメント別収益(2023~2033年

これらのミッションの約50%は、民間企業が主導している。しかし、商業ミッションからの収入は全体の25%に過ぎず、月経済活動は引き続き政府が支配的となる見込みである(図2)。

商業月ペイロード・サービス(CLPS)、有人着陸システム(HLS)、月貨物輸送とソフトタッチダウンによる着陸(LCNS)、先進ティッピングポイント技術(ATPT)、月表面技術研究(LuSTR)などのプログラムを通じて、商業団体と政府・軍事組織との官民パートナーシップが月経済を推進する上で重要な役割を果たすだろう。

図2:月市場、累積ミッション数とセグメント別収益シェア(2023~2033年

月探査の遅れや頓挫が指摘されるなか、NASAは想定される探査の枠組みを満たす技術の育成を続けている。NASAは、財政的な慎重さ、技術的な熟練度、規制の適応性という3つの側面からアプローチしている。これらのアプローチによって、ミッションの予算が現実的なものになり、リスクが管理され、安全性と経済成長に資する枠組みが確保される。

月探査に対するNASAの戦略的アプローチ
NASAは、地球低軌道(LEO)でのイニシアチブを活用し、”as-a-service “モデルの可能性を認識している。このモデルは月の領域に適しており、NASAを含むアルテミス協定の加盟国は、民間セクターの数ある顧客のうちの1社として、コスト効率の恩恵を受けることができる。専門家への専門サービスのアウトソーシングと技術開発への共同アプローチにより、NASAやその他の政府/軍事組織は、最小限の先行投資と共有リスクで最先端の技術やノウハウにアクセスすることができる。このアプローチには、ペイロードの統合から複雑なミッション管理の試みまでの活動が含まれる。as-a-service」哲学の柔軟性は、宇宙探査の進化する願望と見事に合致しており、2028年まで26億米ドルを上限とするNASAの無期限納入・無期限数量CLPS契約は、NASAのコミットメントを強調している。費用対効果、回復力、持続可能性は、as-a-serviceビジネスモデルの重要な要素であり、商業ベンダーに対する顧客の依存度を高めることになる。

NASAの調達戦略は、月探査と居住のための能力を拡張・構築するための商業的提携への関心を示している。Astrobotic Technology社、ICON社、Redwire Space社、Zeno Power社との総額2億米ドルを超える重要な契約は、月と火星のミッションのために現地の資源を使用し、費用対効果が高く、弾力性があり、持続可能な宇宙システムへと意図的にシフトしていることを反映している。月探査のための宇宙ベースの建設システムに焦点を当てたアイコンのプロジェクト・オリンパスは、月面に恒久的な足場を築くための重要な一歩となる。この戦略は、単に伝統的な宇宙開発のハードルを克服するだけでなく、自立した月経済を確立し、月経済の地球資源への依存を最小限に抑え、地球外産業の成長の可能性を生み出すものでもある。

アルゴノートやムーンライトのようなヨーロッパのイニシアティブは、自律性を確保するために設立されつつある。NASAとの協力関係は、欧州内の市場需要を喚起している。資金面での課題はあるものの、欧州の長期的見通しは楽観的である。欧州は、月の未開拓の可能性によってもたらされる機会の増大に対応できる自律型能力を構築する態勢を整えつつある。

月ミッションでは「as-a-service」モデルが新たな標準となる
as-a-service」モデルが定着し、設備投資集中型の長期開発プロジェクトの主流調達チャネルとなるにつれ、商業プレーヤーは月市場で強力な足場を築く態勢を整えている。これは、安定的かつ継続的な収益、長期複数年契約による顧客エンゲージメントの向上、顧客ニーズに基づく拡張能力の強化につながる。市場の需要は、政府と軍の「as-a-service」モデルに固定されているため、インフラと原位置での資源利用において商業需要が急増すると予想される。このため、商業主体が月の資源採掘やインフラ構築などに「as-a-service」モデルを採用できる可能性がある。輸送の信頼性が向上し、位置ナビゲーションとタイミング(PNT)、通信サービスなどがサポートされることで、月での持続的な運用が確立されれば、こうした「as-a-service」モデルはさらに普及し、影響力を持つようになる可能性がある。

したがって、営利団体には、政府/軍事および営利ミッションに対応するために確立されたインフラを活用し、開発追求のために「as-a-service」モデルを戦略的に採用することが勧められる。2023年から2033年までの月市場機会の礎となると予測される政府・軍事契約へのコミットメントと並行して、商業ベンチャーを戦略的ロードマップに組み込み、視野を広げることがこれらの事業体にとって不可欠である。この二重焦点戦略は、従来の契約との持続的な関わりを確保し、商業的プレーヤーを進化する月探査の最前線に位置づけることになる。

執筆者:Prachi Kawade(Analysys Mason社

お問合せ:Analysys Masonに関するお問合せはデータリソース(office@dri.co.jp)までご連絡下さい。

 

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