ストリーミングビデオ事業の変化
Netflixはスポーツには投資しないと言っていた。しかし、11月にジェイク・ポールとマイク・タイソンの試合を配信し、NFLの2試合をクリスマスの日にはストリームした。女子サッカーのワールドカップの2027年と2031年のアメリカでの配信権を得ており、2026年からのF1の権利、さらに2030年からのNFLの日曜の試合の権利等も狙っていると報じられている。Netflixが間違っていたのではなく、スポーツに対する考えを変えたのはストリーミングビデオ事業が大きくと変わっているからである。
収入構造がサブスクリプションである場合、スポーツへの投資は効率的ではない。その時にしか視聴されないスポーツの権利に金を使うより、ロングテールのコンテンツを持ちライブラリーを増やすほうが良い。また、ストリーミング視聴がオンデマンドであるなら、コンテンツとしてはリアルタイムのスポーツではなく、ドラマが適している。
しかし、ここ数年で状況は完全に変わっている。Roku Channel、Pluto TV、Tubi等のFASTサービスはリニア視聴をストリーミングにもたらした。コードカッティングした人たちはニュース番組をFASTで見ており、ストリーミングはオンデマンド視聴だけではなくなった。2025年のスーパーボウルはTubiでも配信され、総視聴者の10%を超える1360万人の人が見た。Tubiの配信は4K/HDRで行われ、地上波放送での画質を上回り、ストリーミングはスポーツには適さないと言う人を黙らせた。
ストリーミングビデオの収入に広告が加わったことも変化の理由である。Disney等のTVネットワークの参入でSVOD市場の競争は厳しくなり、値上げを防ぐために広告付きプランが加わった。Netflixは最初は広告を拒否していたが、2022年11月に広告付きプランをスタートした。Netflixの加入者で広告付プランを利用している人は2023年Q3では28%であったのが、2024年Q3では44%になっている(Antenna社のデータ)。
ロングテールのコンテンツはサブスクリプション・モデルでは投資効率が高いが広告モデルではアドバンテージは無い。広告効果が高いコンテンツはリアルタイムで、度同時に多くの視聴者を得られるものであり、コンテンツと一緒にバズることで広告価値が高まる。スーパーボウルを除くNFLのポストシーズン試合の視聴者数は3000万人程度であり、平均広告収入は$4200万である。ロングテールで、1年で3000万人の視聴があるコンテンツがあっても、同じ広告収入は得られない。
収入がサブスクリプションだけであった時点では、ロングテールのコンテンツに投資するのが正解であった。ロングテールのコンテンツに投資し、豊富なライブラリーを持ち、加入者を脱退させずに、長期的に投資回収をする作戦だ。しかし、広告収入を得るのには豊富なライブラリーは関係無い。逆にリアルタイムで多くの視聴者を得ることが出来るショートテールの方が良い。SVODサービスはサブスクリプションから、広告収入を加えたハイブリッド型になっている。サブスクリプションと広告収入の比率に応じて、どのようなコンテンツに投資するかも変える必要があり、そのバランスが成功の鍵になっていく。