CTV広告のCPMが減った背景
アメリカの全米テレビ広告の3分の2近くはシーズン開始前にUpfrontとして売られている。調査会社のMedia Dynamicsによると、今年の9月から来年の8月までのテレビ・シーズン向けのUpfront売上は$295億で昨年から8.1%に増加があった。Upfrontに占めるストリーミング広告(コネクテッドTV向けの広告)のシェアは増え、放送報告は減っている。今年のUpfrontでの放送広告は$184億で、昨年から3.7%の減少があった。CTV向けの広告は35.3%の成長をし、Upfrontの38%を占める111億になっている。
CTV広告収入のすべてを放送事業者を得ている訳では無い。テレビネットワークのDisney+、Max、Peacock、Pluto TV等のストリーミング・サービスの広告収入は増えている。しかし、CTV向け広告にはテクノロジー勢のNetflix、Google、Amazon等も参入しており、Netflixは今年のUpfrontでの収入は昨年から150%増えたと発表している。さらにCTVプラットフォームを持つRoku、Samsung 等のFASTサービスも普及し、CTV広告市場の競争は激し。
それに加え、CTV広告のCPM価格が減っており、収入を得るのが困難になっている。数年前はまではCTV広告の在庫は少なく、Netflix等のCPMは放送広告よりも高かった。しかし、在庫は急速に増え、価格も下がっている。ABC等の地上波ネットワークの全米広告のCPMは今年のUpfrontでは6%の減少し、CPMは平均$45.34で取引された。ケーブル向けネットワークの広告のCPMは7%減った$20.60であった。CTV広告は昨年から16.7%もの減少をし、$29.50に落ちている。
今年のUpfrontでCTV広告の価格が大きくと減ったのには2つの背景がある。1つはFASTの乱立である。テレビネットワークがコンテンツの抱え込み戦略を止め、過去のコンテンツを使い、FAST向けのチャンネルを作り始めた。これにより、コンテンツを持つPluto TV(Paramount Global)、Tubi(Fox)以外もFASTを容易に提供することが出来るようになった。特に増えているのはスマートTVベンダーのFASTで、RokuのThe Roku Channelの成功に刺激され、Samsung TV+、LG Channels、TCLtv+等が登場している。FASTのCPMは加入者のデータがあるSVODに比べると低く、CTV広告平均価格を下げるだけでなく、FASTサービスが増えたことで在庫過剰になっている。
もう1つの背景は今年から広告付きプランを開始したAmazon Prime Videoに対する警戒心がある。Prime Videoは多くの加入者を持つだけでなく、視聴者の購入データとも紐付いており、大きな勢力になると思われる。テレビネットワークは広告主がAmazon Prime Videoに流れるのを防ぐために、Upfrontでの価格を下げた。特に、Disneyが積極的で、Variety誌は広告主のコミットメントを得るためにDisney+は最大で15%の割引をしたと報道している。Amazon Prime VideoがUpfrontでどの程度の広告を売ったかは発表されていないが、eMarketerは今年のCTV広告のトップはDisney、2位はGoogleで、Amazonが3位に入ると予想している。