スポーツ視聴の方法が変化する兆し
スポーツを見るのには多チャンネルサービスが欠かせない。コードカッティングが進んでいるが、まだ60%の世帯が加入しているのはスポーツのおかげである。スポーツ試合をストリーミングすることはコードカッティングを加速させ、多チャンネル向けチャンネルからの収入を減らすことになるのでネットワークはスポーツ試合のストリーミングには積極的ではなかった。
しかし、状況は変わり始めた。Disney、Warner Bros. Discovery(WBD)、それにFoxの3社はスポーツ試合の配信サービスを提供するアライアンスを発表した。サービはDisneyのESPN、ESPN2、WBDのTNTとTBS、それにFoxのFS1とFS2等の多チャンネル向けチャンネルが放送している試合をストリーミングする。サービスの価格は発表されていないが、$40程度になると予想されている。
この発表とほぼ同時に、残る大手ネットワーク会社のNBCUniversalとParamount GlobalはPeacockとParamount+を統合する話し合いを始めたと、Wall Street Journalが報じた。両者は欧州向けのストリーミングサービスではすでに協力しており、SkyShowtimeを2021年に始めている。Peacock、Paramount+は共に広告付きの価格は$6であり、一緒になった場合の価格は$10程度になるであろう。
Disney、WBD、Foxのサービスには殆どのMLBの試合(日曜の朝の試合はNBCUniversal、金曜はApple TV+が権利を持つ)、NBA、それにNHLの試合の権利を持つ。しかし、NFLの権利はDisneyとFox以外にNBCU、Paramount Global、それにAmazonが持っている。
NBCUniversalは地上波のNBCで放送している試合をPeacockで配信し始めている。Paramount Globalも同様である。PeacockにはNFL、ゴルフ、NASCARの後半期(前半はFox)、IndyCar、オリンピック、プレミアリーグ(サッカー)、ツール・ド・フランス等を配信している。Paramount+にはNFL、PGAゴルフ、UEFAチャンピオンシップ、セリエA、フォーミュラE、大学バスケットボール等がある。
もしも、この2つのアライアンスが出来ると多チャンネルサービスへの加入なしで、多くの主要なスポーツの試合を見ることが可能になる。Disney、WBD、Foxのサービスが$40、Peacock/Paramount+が$10とすると、$50で殆どの主要なスポーツ試合をストリーミングで見ることが出来るようになる。ケーブルTVの月額は$100程度、vMVPDのYouTube TVは$72であるので、多チャンネルサービスに加入するより30%から50%は安い。
当然、これはコードカッティングを増やすことになる。しかし、多チャンネルサービスの加入者はすでに大きくと減っている。多チャンネル事業者からの再送信料、それに広告収入は減少している。スポーツのストリーミングによる収入を増やさないと、高価な放送権利金を払うことは困難になっていく。
それに以上に重要な理由がある。スポーツリーグ側は新しい(イコール、若い)ファンを求めており、ストリーミングでの配信を増やそうとしている。NFLの木曜日の試合がFoxからAmazonに移ったことで、視聴者は減ったが、視聴者の年齢が若くなったことでNFLは非常に満足をしている。ネットワークが放送にしがみついていると、リーグはAmazon、Apple等との契約を増やしていく。ネットワークに取り、スポーツは重要であり、Amazon、Apple、Google等に権利を奪われることを防がなければならない。