Netflixで広告する価値
11月に開始したNetflixのBasic with Adsの広告費は1000インプレッションあたり、$60前後で、アップフロントでの放送広告のよりも25%高く、スーパーボウルでの広告と同等である。しかし、需要はNetflixが供給出来る枠を上回っている。Netflixで広告する魅力は何か。
その答えはAmazon Prime VideoのNational Football League(NFL)の木曜の試合の視聴者のデモグラフィーが示している。NFLのThursday Night Football(TNF)の放送権利は2022年シーズンにFoxからAmazon Prime Videoに移った。2021年はFoxが放送し、Amazonもストリームしたが、2022年からAmazonの独占に変わった。
2021年のTNFの平均視聴者数は1620万人であったのが、2022年には958万人に減った。41%の減少であるが、2021年の8週目のTNFはクリスマスと重なり、2030万人もの視聴者があった。この試合を除いた平均視聴者は1330万人になるが、それでも28%の減少になる。
しかし、Amazon Prime Videoでの配信になることでTNFの平均視聴者年齢は7歳も若返り、47歳となった。これは高年齢層の視聴が減ったからだけでない。18~34歳の視聴者は前年よりも11%増え、211万人になった。18~34歳の男性だけだと、18%もの増加がある。Amazon Prime VideoのTNF視聴者に占める18~34歳の割合は22%であった。これに対し、2022年秋のプライムタイムでの放送視聴者に占める18~34歳の割合はたったの7%である。
放送からストリーミングに変わったことで視聴者年齢が若くなっただけでなく、視聴者の平均収入も増えた。TNFをAmazon Prime Videoで見た人の平均世帯収入は$98,000で、TNF以外の試合の視聴者の世帯年収の$82,800よりも19%も高い。AmazonはTFNをストリーミング化することで広告主が求めている、若く、年収が高い視聴者を捕まえることが出来ること証明した。Netflixの視聴者もAmazon Prime Videoと同じ層であり、放送ではリーチが不可能になった人たちである。
Netflixの課題は供給出来る広告視聴者を増やすことで、それには加入者を広告付きプランに移行させる必要がある。だが、これは簡単ではない。Netflixの加入者の多くは、広告が嫌いであるからテレビ放送を見なくなり、SVODを選んだ人たちである。彼らに広告を見ても良いと思わせるには、料金が月額で$3程度安くなる以上のモチベーションを与える必要がある。