ケーブルTV事業者と通信事業者の戦い
モバイル通信とブロードバンド市場でケーブルTVと通信事業者の争いが始まっている。ケーブルTV事業者はモバイル市場で着実にシェアを伸ばしている。現在、Comcast、Charter、Altice USAがモバイル市場に参入しており、Q2には3社で70.3万回線を増やし、新規回線数の45%近くを得ている。3社の合計回線数は840万で、まだ、市場全体の3%であるが、Coxも参入間近であり、WOW等の中小ケーブル事業者も参入を始めている。
ケーブルTV事業者はブロードバンド、それにケーブルTV加入世帯に低価格のモバイルサービスをバンドル販売することで加入者を増やしている。データ量、価格、ロイヤリティー・プログラム、特典等のモバイル通信サービス内容の評価を行っているNaviによると、ベーシックなプランではケーブルTV事業者が通信事業者より優っている。Comcast、Charter、Cox、Altice USAの4社でブロードバンド市場の65%のシェアを持っており、モバイルサービスをバンドルする効果は大きい。
サービスはMVNOとして提供しているが、利用者数が多い地域では自前の回線を持ち始めている。3.5 GHz帯の競売で得たライセンス数のトップ5はVerizon、Dish Network、Comcast、Charter、Coxで、5社中の4社が多チャンネルサービス事業者であった。
だが、反撃も始まっている。ComcastとCharterに回線を提供しているVerizon、それにAltice USAの回線提供者のT-Mobileは固定無線によるブロードバンドでケーブルTV事業者の収入を奪おとしている。通信事業者はラストマイルでの光ファイバーの遅れからブロードバンドのシェアを落としてきた。ブロードバンド市場における通信事業者のシェアは2012年では42.5%あったのが、2021年には30.2%になっている。
だが、2022年Q2ではComcast、Charter、Cox、Altice USAの4社は6万のブロードバンド加入者を失っている。対して、T-Mobileは56万世帯、Verizonは26.8万世帯のブロードバンド世帯を増やした。T-Mobileのすべて、Verizonの25.6万世帯は固定無線でのブロードバンド加入者である。
T-MobileとVerizonの固定無線ブロードバンド加入者は合計で224万世帯になっている。これは、ブロードバンド世帯の2%程度であり、大きな規模では無いが、ケーブルTV事業者の加入者を奪っていることは確実である。Comcastは固定無線によるブロードバンドには問題があり、大きな脅威ではないと語っている。しかし、Comcastは固定無線ブロードバンドは利用が高い昼間は回線速度が落ちるので、固定無線でのブロードバンドに加入したことで、バンパイアのように深夜の生活になった家族を揶揄したテレビ広告を流しており、明らかに固定無線でのブロードバンドに対して警戒をしている。