大きな成長をしているコネクテッドTV向け広告
コネクテッドTV(CTV)向けの広告が大きな成長を見せている。eMarketerの調査では2021年のCTV広告の売上は昨年から60%の成長をし、$144.4億に達し、2022年には$191億になる。今年のテレビ放送広告の規模は$659億であるので、その22%の規模であり、来年には28%の規模に増える。
CTV広告が大きな成長をしているのには複数の理由がある。1つはCTV利用の増加である。CTVの保有率は2015年ではブロードバンド世帯の42%であったのが、2021年のQ2では86%と倍増している。Convivaによると、スマートTV、ストリーミング・プレーヤ、ゲーム機等でのストリーミングビデオの視聴は総再生時間の82%をしている(スマートフォンが8%、コンピュータが6%、タブレットが4%)。
もう1つはAVODの成長である。これまでは、ストリーミングビデオのサービスの殆どはSVODであった。HuluはAVODでスタートしたが、広告では収入が得られずに広告付きSVODに転向をした。しかし、ストリーミングでの視聴が増え、放送とSVODの併用から、SVOとAVODの併用に移行している。eMarketerによるとAVOD利用者は2018年ではインターネット利用者の21.5%であったのが、今年は43.3%になっている。
もっとも大きな理由はテレビ放送のリーチが大きく減っているからである。2017年ではテレビ放送の18歳以上の人口でのリーチ率は90%を超えていたのが、現在は80%を割っている。特に、18歳から34歳では60%に落ちており、3分の1以上はテレビ放送ではリーチ不可能になっている。これまではテレビ放送で十分なリーチがあり、広告付きストリーミングビデオ(AVOD、あるいは広告付きSVOD)を使う必要は少なかったのが、今はストリーミングでなければリーチ出来ない人が増えている。大きな画面のCTVでの視聴が増えることで、コンテンツもテレビ番組同等の品質になり、放送広告に頼っていたスポンサーもCTVを使い始めている。
また、CTV広告の急成長で広告プラットフォームの争いが始まった。CTV広告のプラットフォームにはAVODサービス以外にCTVデバイスがある。CTV広告プラットフォームのトップ2はHuluとYouTubeで、それぞれ21.6%と17.6%のシェアがある。CTVデバイス側の広告はホーム画面等への広告で規模は小さかった。しかし、CTVデバイスではトップシェアのRokuはAVOD事業者向けの広告プラットフォームを開始し、さらにRoku Channelと言うAVODサービスの提供も始めた。これによりRokuの広告収入は急成長し、広告等の設置されたデバイスから得る収入の率は売上の85%を占めるようになり、CTV広告プラットフォームとしても11%で、Hulu、YouTubeに続く、3位になっている。
Rokuの成長を見て、他のCTVデバイス会社も広告事業に殺到している。Amazon(Fire TV)、Google(Android TVとChromecast)は当然の事、スマートTVベンダーのSamsung、LG、Vizio等も、Samsung TV+等の自社ブランドのAVODサービスを始め、さらに広告プラットフォーム事業も立ち上げている。これにより、CTV広告プラットフォームはDisney(Hulu)、Fox(Tubi)、ViacomCBS(Pluto TV)、NBCUniversal(Peacock)等の大手コンテンツ事業者、それにRoku、Google、Amazon、Samsun、LG等のテクノロジー会社が競合する市場になっている。