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多様化する OTTビデオサービスのビジネスモデル

多様化する OTTビデオサービスのビジネスモデル

 

OTTビデオサービスと言えばNetflixに代表されるSVODが主要なビジネスモデルである。Digital Entertainment Groupによると2021年前半のアメリカのSVOD、有料VOD(Transactional VOD)、それに電子販売(Electronic Sell Through)市場の合計は$143億で、その85.5%はSVODが占め、有料VODが8%、電子販売が6.5%であった。

 

その他に広告収入のAVODがあるが、YouTubeの独占であり、これまではTV番組、あるいは映画のAVODには大したものはなかった。また、OTTサービスを多チャンネルサービスの料金に含めるTV Everywhereへの期待は高かっが、コードカッティングが増えたことで将来性は薄れた。

 

しかし、ここ数年でAVODが急成長し、また、新たなビジネスモデルも登場し、SVODの独占では無く、多様化が始まっている。変化のきっかけの1つはOTTでの広告の需要が増えたことである。TV放送のリーチ率が減ったことでOTTビデオの広告への興味は高まっていたが、視聴デバイスがスマートフォンで、コンテンツも短く、TVと同様の広告には使えなかった。しかし、コネクテッドTV(CTV)での視聴が増え、質の高いコンテンツのAVODサービスが登場したことで大手スポンサーがOTTで広告し始めた。

 

AVODとしてはFoxのTubiとストリーミング・プレーヤのRokuが提供しているRoku Channelが大手である。Roku Channelのアクティブ利用者は7000万人を超えており、RokuのQ2の広告を含めたプラットフォームからの収入は前年同期から117%増え、$5.3億となり、売上全体の82%を占めている。Roku Channelの大成功により、Samsung TV Plus、Vizio WatchFree等CTVプラットフォームもAVODサービスの提供を始めている。

 

広告需要が増えたことで、SVODでも広告付きのサービスが増えている。Huluには広告付き、広告無しの両方のプランがあり、Q2のARPUは前年同期比で15%増え、$13.15になっている。広告付きの料金は$6で、広告付き料金の半分であるが、広告付きの方がAPRUが高くなっている。WarnerMediaのHBO Max、ViacomCBSのParamount+、NBCUniversalのPeacockにも広告付きと無しのプランがある。

 

広告収入のサービスとしてFAST(Free Ad Supported TV)もある。AVODと違いはFASTはリニア配信のチャンネルベースのサービスであることだ。しかし、FASTにもオンデマンドのコンテンツがあり、また、AVODのサービスもリニアチャンネルを加えているので、AVODとFASTの差は少なくなっている。しかし、FASTのUIはリニアチャンネルが主体になっており、提供されるチャンネル数も多い。最もポピュラーなFASTのPluto TVには200以上のチャンネルがある。

 

FASTは無料の多チャンネルサービスとも言えるが、既存の多チャンネルサービスをOTTで提供するvMVPD(Virtual Multichannel Video Programming Distributor)とは異なる。vMVPDは既存のケーブルTV等が配信しているのと同じチャンネルを提供しており、サービスによっては地上波の再送信もある。vMVPDは有料であり、Hulu with Live TVは$65で75以上のチャンネルを放送している。ライブが基本のサービスとしてはESPN+、DAZN等のスポーツ専門の有料OTTサービスもある。

 

Covid-19により多くの映画館が閉鎖になったことで、劇場公開と同時に新作映画を配信するPremium VOD(PVOD)も登場した。PVODの料金は$30程度で、通常のVODより高価であるが、映画料金は$10程度であるので、3人家族で見れば映画と同じコストになる。DisneyのPVODを利用する場合、PVODの料金以外に、Disney+への加入(メンバーシップ)が必要になる。

 

もう1つのビジネスモデルとして、Amazonが行っているメンバーシップ制がある。Prime Videoはそれだけに加入することも出来るが、殆どの人はPrimeメンバーの特典として利用している。このメンバーシップのモデルは他社も関心を示し始めている。Netflixは最近、スマートフォン向けのゲームを加入者に無料で提供する計画を発表しており、メンバーシップ特典を作ろうとしている。

 

さらに、多くの事業者は1つのビジネスモデル採用するのではなく、複数のモデルを1つのサービスで提供し始めている。前期のように殆どのAVODはFASTを加えている。HuluにはvMVPDが追加されるHulu with Live TVがある。自動キオスクでDVD/Blu-rayをレンタルしているRedboxはVODサービスのRedbox Instant の中で、FASTも提供している。最も様々なビジネスモデルが存在するのはPeacockで、1つのサービスでAVOD、FAST、SVOD、広告付きSVOD、スポーツ配信を提供している。さらにNBCUniversalの親会社のComcastはVODのVuduを買収しており、いずれはPeacockからVuduも利用可能にするかも知れない。

 

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