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自動運転関連機器市場の主導権はMobileyeからNVIDIAへ。次に主導権を握るのは誰か?

自動運転関連機器市場の主導権はMobileyeからNVIDIAへ。次に主導権を握るのは誰か?

1) 序

ADAS機能の急速な発展と各国規制機関の動きもあり、ADASの実用化が完成車メーカ・Tier1ベンダー・車載ICベンダーを巻きこんで急速に進んでいる (図1参照)。それに伴い、車載機器開発における車載ICベンダーの位置づけも高まっている。

今回は、ICベンダーの動きを分析する。

出典:TI社 先進運転支援システム(ADAS)ソリューションズ・ガイド     図1- ADAS機能実装例

 

2) 各社ポートフォリオ分析

2.1. Intel/Mobileye

Mobileyeは、ADASにおいて車両検知・衝突回避ソリューションを提供するテクノロジーカンパニーである。優れた視覚システムを単眼レンズで実現することで (図2参照)、高度なコストパフォーマンスを差別化ポイントとし、多くの車種で採用されている (図3参照)。搭載実績も2016年1月現在、1000万台以上になり、シェアも世界全体では70~80%と推定されている。

Mobileye社ウェブサイト

出典:Mobileye社ウェブサイト       図-2; Mobileye社ソリューション動作イメージ

 

出典:Mobileys社のSEC提出資料      図3- Mobileye社ソリューションを採用した車種の推移

 

Mpbileyeのソリューションは、EyeQと呼ばれるSoCで、現在は第三世代が提供されている。

 

EyeQ1 EyeQ2 EyeQ3 EyeQ4 EyeQ5
量産時期 2008年 2010年 2014年 2017年 2020年
レベル LDW/AHC/TSR/ 

明るさ検知/雨検知

AEB/ACC/TJA レベル2 レベル3 レベル4-5

出典:Mobileye社ウェブサイト      図3- Mobileye社 EyeQ ロードマップ

 

2.2. NVIDIA

NVIDIAはCES2015にてDRIVE PX (GPUと人工知能を組み合わせた車載人工知能エンジン)を発表し、自動運転機器市場に参入した。引き続き、CES2016にて、プロトタイプ機器となる「DRIVE PX2」を発表し (図4)、2016年9月には自動運転用GPU「XAVIER」を発表している。今後、GPUをEXAVIERに切り替えて消費電力を削減した「DRIVE PX」をリリースすると予測される。

 

>>  高速道路での運転を自動化する「オートクルーズ」- 2016年第四四半期提供開始

>> ドライバーが運転操作をせずに目的地まで自動走行する「オートショーファー」

>>  運転席に人がいなくても自動走行する「フルオートノミ―」

出典:NVIDIA社講演資料     図-4; DRIVE PX2 製品系列

 

又、「XAVIER」発表と同時に、NVIDIAは自動運転用OSとなる「DriveWorks」を発表し、車載人工知能エンジンの強化を進めている (図5参照)。

 

出典:NVIDIA社講演資料   図-5; Driveworks 製品系列

 

3) 市場はどう動く? ベンダーはどう動く?

2010年以降、ADAS実装が自動緊急ブレーキから始まったこともあり、完成車メーカ・Tier1ベンダーの機能開発に加えて、低コストの単眼カメラの画像処理機能に優れたMobileyeが、重要なプレイヤという位置づけを得てきた。

しかし、今や、市場の関心はADASとその為のセンサー・画像処理技術から、レベル3/レベル4の自動運転と人工知能エンジンに移りつつある。

それが、今年前半のNVIDIAの主要完成車メーカ、Tier-1ベンダーとの契約締結に現れている。

さて、これから、市場はどのように動くのであろうか? NVIDIAの優勢はいつまで続くのであろうか?

 

NVIDIAはGPU+人工知能を差別化ポイントにして自動運転市場で有利なポジションを得たが、この優位性は、まだ、しばらく続くと予想される。NVIDIAは、GPUを中心に$6.3Bの売上げを持っており、半導体市場ランキング上では18位の半導体ベンダーである。今後も、GPUテクノロジをベースに自動運転技術の開発を進めていくであろう。

 

Mobileyeも、今はNIVIDIに抜かれたような形になっているが、今年3月にIntelに買収されたことで、大きな財務基盤と広大な技術基盤を、まだ潜在的ではあるが大きな販売チャネルを手にいれたことで、2017年リリース予定のレベル3対応EyeQ4と共に、NIVIDIに対して反撃に出ると予想される。

 

車載半導体市場は$30B (3兆円市場)である、Mobileye・NVIDIAの2016年売上げは$358M、$320M程度となっており、いずれもシェアは1%強である。

以下のトップ10ランキングに見るように、両社よりも強力な企業が多数、存在する。車載人工知能エンジンという領域では両社は有利なポジションを得たが、車載半導体市場全体で見るとそのポジションはまだまだ脆弱である。

出典:Semicast Research社    図6- 車載半導体市場 2016年ランキング

 

一言で自動車といっても、消費者向けではセダンやワゴン、SUVがあり、商用車ではトラックやバスがある。一つの車載人工知能エンジンがすべての車種をカバーできる訳でもない。NVIDIAが、量産車用自動運転ではBoschと、トラック用自動運転ではZFと提携した事もこの表れである。

 

MobileyeとNVIDIAが先行しているとは言え、市場自体がまだまだ黎明期であり、今後、NXP Semicondutors、Infinion、ルネサス (図7)等の追撃・巻き返しや、Mobileye買収を通じて参入したIntel、NXP Semiconductors買収を通じて参入するQualcommによる競争環境の激変が予想される。

出典:ルネサス社ウェブサイト   図7- ルネサス社 自動運転ソリューション

 

最後に、Google/WAYMOの動きを挙げておく。

Googleは、完成車メーカのFCA、配車サービスプロバイダのLyftと、アリゾナ州で実験サービスを始めた。このサービスに使われるFCAのミニバンが搭載している技術の詳細はいずれ公開されるであろうが、その時に大きなルールチェンジが起きる可能性もあり、その時に出るベンダーにも注目しておきたい。

 

4) 最後に

販売台数で見た時、自動車メーカの世界トップ10を見た時、そこには、トヨタ(1位)、ルノー・日産(4位)、ホンダ(7位)、スズキ(10位)の4社がいる。

Tier-1ベンダーで世界トップ10を見た時、そこにはデンソー(3位)、ブリジストン(7位)、アイシン精機(8位)、住友電工(9位)の4社がいる。

しかし、自動運転関連市場において、名前が挙がった日本企業はルネサスだけである。

かろうじて、日本国内でDeNAが日産をパートナーしつつ、ヤマト運輸と提携しての「ロボネコヤマト=宅配×自動運転」、横浜市と協力しての「ロボットシャトル」を発表している程度である。

日本の半導体ベンダー・ITベンダーの奮起・挑戦を期待したい。

 

 

データリソース社が推奨する自動運転関連市場調査レポート

1. 半自律運転自動車・自律運転自動車市場:技術毎、コンポーネント毎、パワートレイン毎(従来型自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車)、地域毎 - 2021年までと2030年の世界市場予測

>>  調査会社:MarketsandMarkets                     発行年月:2017年5月

2. 自動運転システム開発企業18社の戦略と実行評価 (ナビガントリサーチのリーダーボードレポートシリーズ)

>>  調査会社:Navigant Research                       発行年月 2017年4月

3. ライダー(画像検出と測距)市場:製品毎(空間、地中、無人航空機、ソリッドステート)、用途毎(屋内マッピング、エンジニアリング、ADAS・自動運転、探査、都市計画、製図、気象)、コンポーネント毎、サービス毎、地域毎 - 2022年までの世界市場予測

>>  調査会社:MarketsandMarkets                     発行年月:2017年3月

4. CANバスのセキュリティ対策

>>  調査会社:SBD – Secured by Design Ltd       発行年月:2017年2月

5. 世界のレベル3自動運転車市場 2017-2021年

>>  調査会社:TechNavio                                   発行年月:2017年1月

 

ADAS/自動運転に関する市場の動き

年月日
2008年 Mobileye、EyeQ1をBMW7に搭載 (ADAS; LDW,AHC,TSR,Light/Rain Sensor)
2010年 Mobileye、EyeQ2をVolvoS60に搭載 (ADAS; EyeQ1+AEB,FVW,ACC,TJI)
2013年 EUが全ての新型商用車で自動緊急ブレーキの装備を義務化 (11月)
2014年 Mobileye、EyeQ3の量産開始 (自動運転レベル2相当)
2015年
1月 NVIDIA、車載人工知能エンジン「DRIVE PX」を発表し自動運転機器市場に参入 (CES2015)
11月 EUが全ての商用車の新車に自動緊急ブレーキの装備を義務化 (11月)
2016年
1月 NVIDIA、車載人工知能エンジン「DRIVE PX2」を発表 (CES2016)
3月 Mobileye社ソリューションを使った自動運転車の2021年実用化をBMWが発表。車種は「iNEXT」
NHTSA/IIHS、自動車メーカ20社と米国で販売される新車につき以下を合意 

–        乗用車/SUVでは2022年末までに自動ブレーキ標準装備化

–        大型トラックでは2025年末までに自動ブレーキ標準装備化

5月 テスラ「モデルS」で死亡事故が発生。Mobileye社のEyeQ3が搭載
7月 Intel、BMWの自動運転車「iNEXT」開発参画を発表
Mobileye、Teslaとの取引を解消
9月 NVIDIA、自動運転用GPU「XAVIER」と自動運転OS「DRIVEWORKS ALPHA1」を発表 (GTC Europe)
10月 Qualcomm、オランダのNXPセミコンダーズ社を買収 (買収額は4.9兆円)
NVIDIA、「DRIVEWORKS ALPHA1」提供開始
12月 Google、自動運転車開発プロジェクトを新会社WAYMOにスピンオフ
GoogleとFiat Chrysler Automobile、完全自動運転のテスト車を発表
ホンダとWAYMO、完全自動運転車の共同研究を行う方向で覚書をかわす
2017年
1月 NVIDIA、CES2017で以下を発表 

– 「AI Co-Pilot」(ドライバーアシスタント)の発表

– AudiとのAI搭載自動車運転開発での提携を発表

– Mercedes BenzとのAI自律運転や音声認識を含む広い範囲での共同開発

Intel、「Intel GO」を発表 (CES2017)
乗用車の衝突被害軽減ブレーキ義務化の国際基準策定が国連専門会議で開始
3月 ZF、トラック・商用車向けZF ProAI (NVIDAI Drive PX2 AutoCruiseベースの車載AIコンピュータ)を発表。実働用は2018年始め
Intel、Mobileye買収(買収額は1.8兆円)と自動運転テクノロジ開発拠点のイスラエル移動を発表
NVIDIAとBosch、XAVIERをベースとしたレベル4相当車載人工知能エンジン開発で提携 (Bosch Connected World)
5月 トヨタ、NVIDIAの「NVIDIA DRIVE PX2」を採用
WaymoとLift、配車サービスを通じた自動運転技術の共同開発
今後の展望
2017年 Mobileye、自動運転レベル3相当のソリューションを提供開始
NVIDIA、自動運転レベル3相当のソリューションを提供開始
2018年 NVIDIA、Audiと開発した自動運転車がカリフォルニア州等でAI自動運転車を公道で走行(CES2017でジェンスン・ファンCEOが発表)
2018年末、NVIDIA、Level4自動走行車向けシステムの提供開始
2020年 NVIDIA、Level4対応自動走行車を実用化 (CES2017でJ・ファンCEOが発表)

 

筆者:株式会社データリソース客員研究員 鈴木浩之 (ICTラボラトリー代表)

 

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