サマリー
本書の特長
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研究開発が熾烈な電気自動車向けワイヤレス給電技術について、停車中だけでなく走行中技術までの最前線技術を記載!
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海外動向や法規制、将来展望などまでを述べ、現状の技術開発から今後の産業動向などを踏まえた今後の開発に必携の一冊!
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ワイヤレス給電に関わる電気的視点から、道路にコイルや電極を埋めるための土木の 視点,標準化,関連規制や法律、大型車、普及のさせ方,安全面からの視点、海外最新動向など,様々なバックグラウンドからの多角的な視点を網羅!
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日本のEV向け停車中・走行中ワイヤレス給電の研究開発に関わる最前線の関係者によるご執筆!半導体パッケージ用ガラス基板に求められる特性、ガラスインターポーザの開発動向!
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はじめに
本書は,2024年現在における日本の走行中ワイヤレス給電の研究開発に関わる最前線の関係者にご執筆頂きました。そこで,はじめに,本執筆を引き受けて頂いた著者の皆様に心から感謝の意を申し上げます。
今,電気自動車向けのワイヤレス給電は研究開発が熾烈な勢いでされており,正直執筆どころでは無い状況にもかかわらず,ご厚意で引き受けて頂きました。一方で,ワイヤレス充電の市民権がなければ,今後この産業が成り立たないので,広く多くの方に現状の技術開発がどの様に行なわれ,今どのレベルであり,今後どの様になっていくのかを知って頂くきっかけ作りも非常に大切な事なのも重々知っているため,各執筆者の色々なご配慮を得て本書が成立していると思っております。そして,先見の明をもって最初に企画を立ち上げてくださったシーエムシー・リサーチの担当者の初田様,坂田様にも感謝申し上げます。
走行中ワイヤレス給電は多くの分野が関わるため,ワイヤレス充電を行っている電気的な所だけでは成立しません。道路にコイルや電極を埋めるための土木の視点,標準化の視点,普及のさせ方の視点,安全面からの視点など,様々なバックグラウンドを持った執筆者各々の視点が重要であり,各々の執筆者に自由に思いの丈を執筆して頂いております。そのため,重複する箇所や一つの事柄に対して異なった考えなども記載させて頂いております。これらは非常に重要なことであり,各々のバックグラウンドを大切にしながら,違う意見や考えを共有することで次第に理解し合えるというプロセスを読者の皆様とも共有することと考えております。
本書の内容としては,EV向けのワイヤレス充電を停車中だけでなく走行中も取り上げ,また,関係する規制や法律も取り上げております。また,最新動向も非常に良くまとまっており,更に,大型車の視点,道路からの視点,大電力化の方法,今後の普及の見通し,安全面など多くの著者の多角的な視点でまとまった良質な書となりました。
これは一重に,執筆者のおかげであり,重ねて御礼申し上げます。
東京理科大学 創域理工学部 電気電子情報工学科 准教授 居村岳広
■ 発 行:2024年9月30日
■ 監 修:居村 岳広
(東京理科大学 創域理工学部 電気電子情報工学科 准教授)
■ 編集発行:(株)シーエムシー・リサーチ
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目次
Wireless Power Transfer in Static and Dynamic Vehicle Scenarios: Laws, Emerging Technologies, and Future Outlook
第1章 ワイヤレス給電の基礎 畑 勝裕
1 給電方式の分類
1.1 近接結合型:送受電器の結合による場のエネルギーを利用
1.2 空間伝送型:送電器の放射エネルギーを受電器が回収
2 磁界結合方式と電界結合方式
2.1 各方式の特徴比較
2.2 各方式で主に利用する周波数帯
2.3 高周波パワーエレクトロニクス技術の進展
2.4 周囲環境の考慮
3 磁界結合方式の基礎
3.1 電磁誘導の法則が基本
3.2 大電力給電を実現するために
3.3 高周波化の課題
3.4 高効率化の重要性
3.5 ワイヤレス給電の損失要因
4 電力変換回路の利用
4.1 電源システムとしてのワイヤレス給電
4.2 電力変換回路を使ったシステム構成
4.3 基本的な電力変換回路の分類
4.4 電源や負荷に応じて電力変換回路を使いこなす
5 まとめ
自動車応用を考慮した設計について
第2章 各種法規 名雪琢弥
1 はじめに
2 ワイヤレス電力伝送の標準化動向
2.1 地上側規格
2.2 車両側規格
2.3 米国SAEの規格
3 ワイヤレス電力伝送のEMC規格
3.1 国際的な利用周波数の割り当て
(1) 磁界結合型一般用ワイヤレス電力伝送
(2) EV用ワイヤレス電力伝送
(3) 空間伝送型ワイヤレス電力伝送
3.2 国内電波法関連の省令改正など
(1) 400kHz帯電界結合型一般用ワイヤレス電力伝送(100W)
(2) 6.7MHz帯磁界結合型一般用ワイヤレス電力伝送(100W)
(3) EV用ワイヤレス電力伝送(7.7kW)
(4) 空間伝送型ワイヤレス電力伝送
3.3 CISPR11の動向
3.4 人体に対する防護ガイドライン
4 まとめ
参考文献
第3章 海外動向 大島竜輝
1 停車中ワイヤレス給電と走行中ワイヤレス給電の主な取り組みと本章のスコープ
2 停車中ワイヤレス給電のプロジェクト,民間企業の動向
2.1 WiTricity(ワイトリシティ)社
2.2 BRUSA(ブルーサ)社
2.3 Tesla(テスラ)社
2.4 InductEV(旧Momentum Dynamics社)
(1) バス向けプロジェクト(アメリカ,バス,2018年~)
(2) タクシー向けプロジェクト(スウェーデン・ノルウェー,タクシー,2023年~)
3 走行中ワイヤレス給電の国家計画
3.1 欧州委員会
3.2 スウェーデン
3.3 フランス
3.4 ドイツ
3.5 欧州3カ国の連携の取り組み
4 走行中ワイヤレス給電のプロジェクト,民間企業の動向
4.1 Electreon(エレクトレオン)社
(1) Smartroad Gotland(スウェーデン,バス・トラック,2019年~2023年)
(2) トヨタ自動車・デンソーとの共同研究開発(イスラエル等,乗用車,2023年~)
(3) その他
4.2 VEDECOM(ベデコム)・CIRCE(キルケ)
(1) INCIT-EV(フランス等,乗用車・商用バン,2020年~2024年)
4.3 (参考)Qualcomm(クアルコム)
(1)FABRIC(フランス等,乗用車,2014年~2017年)
5 まとめ
参考文献
第4章 停車中ワイヤレス給電技術
第1節 停車中ワイヤレス充電への取り組み事例 築山大輔
1 はじめに
2 ワイヤレス充電器の原理
3 産業機器向けワイヤレス充電器
4 電気推進船へのワイヤレス充電技術適用事例
5 電気自動車向け停車中ワイヤレス充電器
6 ワイヤレス充電技術適用の利点および課題
7 まとめ
参考文献
第2節 停車用シートコイル 岡部将人
1 シートコイルの開発経緯
2 シートコイルの構造と製造プロセス
2.1 シートコイルの構造
2.2 シートコイルの製造プロセス
3 車載シートコイルユニット
3.1 第3世代シートコイル技術
3.2 ユニットの薄型化
3.3 シートコイルとリッツ線コイルの伝送性能比較
4 送電シートコイルユニット
5 2層型シートコイル
参考文献
第3節 10kW級電界結合型カプラの開発 鶴谷直樹,小原大輝
1 はじめに
2 電界結合方式の基礎
2.1 電界結合方式の原理
2.2 磁界結合方式と電界結合方式の比較
3 カプラ構造と特性
3.1 カプラ構造
3.2 コイル構造
3.3 位置ずれ特性
4 10kW級電力伝送試験
4.1 評価システム
4.2 10kW級電力伝送試験結果
5 漏洩電界計測
5.1 評価システム
5.2 測定結果
6 まとめ
謝辞
参考文献
第5章 走行中ワイヤレス給電技術
第1節 磁界を用いた走行中ワイヤレス給電 居村岳広
1 DWPTの需要・意義・実現可能性
1.1 DWPTの需要と意義
1.2 DWPTの実現可能性(コスト)
1.3 互換性1:停車中と走行中の互換性
1.4 互換性2:DWPTの大型車と乗用車の互換性
1.5 停車中充電走行中ワイヤレス充電との違い
1.6 DWPTのシステム全体
2 DWPTのコイル
2.1 DWPTの送電側コイル(トラックタイプとパッドタイプ)
2.2 DWPTのコイル設計
2.3 電源につなげるコイルの数(S─S と Double─LCC の比較)
3 DWPTの制御
3.1 DWPT制御の必要性
3.2 Double─LCC方式のDWPTシステム
〈速度推定を用いたDWPTシステム〉
〈速度推定法〉
〈切り替え制御の実験〉
〈待機損失と漏洩磁界の低減効果〉
4 DWPTの埋設技術
4.1 コイル埋設実験の意義
4.2 大学キャンパス内コイル埋設実験
5 DWPTの漏洩磁界抑制
5.1 遠方漏洩磁界の理論について
5.2 DWPTの漏洩磁界抑制のキャンセルコイル構成
5.3 電磁界解析による検証
5.4 実験による抑制効果の実証
6 磁界を用いた DWPT のまとめ
参考文献
第2節 走行中給電に対応したワイヤレスインホイールモータ 清水 修,藤本博志
1 インホイールモータとオンボードモータ
2 ワイヤレスインホイールモータ
3 走行中給電対応型ワイヤレスインホイールモータ
参考文献
第3節 電界結合方式による走行中ワイヤレス給電道路の開発 遠藤哲夫,新藤竹文,水谷 豊,澤口 実
1 無線給電道路の舗装構成
2 無線給電道路の施工
3 電力伝送効率
4 漏えい電磁界
5 まとめ
謝辞
参考文献
第4節 車載ユニットの研究事例 前村雅人,橋本俊哉
1 取り組みのねらい
2 取り組みの内容
3 まとめと展望
参考文献
第5節 EVインフラとしての走行中ワイヤレス給電の可能性 本間裕大
1 はじめに
2 数理最適化および OR とは
3 様々なEVインフラ形態の比較
4 WPTSの最適配置モデルの提案
5 日本の高速道路ネットワークにおけるWPTSの有効性
6 最適配置の自由度がもたらすスマートエネルギーとの親和性
7 おわりに
参考文献
第6章 大型車の電動化の動向と将来像 森田賢治
1 はじめに
2 大型車の電動化技術
2.1 BEVの走行電気エネルギー確保技術の整理
2.2 ERSと他方式のWtW効率
2.3 ERSの種類
2.4 バッテリパックのエネルギー密度とERS効果との関係
2.5 ERSと他方式の社会実装の難しさ
3 大型車の将来像
4 まとめ
参考文献
第7章 電化道路と将来展望 阿部長門
1 道路の役割
2 電化道路
2.1 定義(PIARCの考え方)
2.2 電化によるCO2削減効果
2.3 非接触給電舗装について
2.4 各種方法の比較
2.5 舗装埋設における課題
3 路面太陽光発電システム
3.1 概要
3.2 各種システムの事例
3.3 今後に向けた動向および予想
4 2040年に向けて道路が変わる
参考文献
第8章 大電力化の取り組みと課題 日下佳祐
1 はじめに
2 大電力化に向けた課題
2.1 漏えい磁界(人体防護・無線妨害)
2.1.1 漏えい磁界の影響
2.1.2 人体防護の観点からみた漏えい電磁界の制限
2.1.3 無線障害防止の観点からみた漏えい電磁界の制限
2.1.4 漏えい磁界の低減手法
2.2 伝送コイル(巻線・磁性体)
3 まとめ
参考文献
第9章 法規制と期待 金子法子
1 停車中と走行中ワイヤレス充電に関わる法規制とは
2 道路法と期待
3 電波法と期待
4 道路運送車両法と期待
5 電気事業法と期待
5.1 電気工作物の保安,設計について
5.2 ワイヤレス給電の事業形態について
6 その他法令
謝辞
参考文献
第10章 ワイヤレス給電が発現する効果と導入シナリオ 高橋香織
1 なぜワイヤレス給電が必要なのか
2 高度化するワイヤレス給電技術が発現効果を増大させる
3 導入シナリオ~限定領域から公共交通,そして公道へと展開~
4 おわりに
参考文献
第11章 ワイヤレス給電からの電磁界ばく露に関する生体安全性 和氣加奈子,大西輝夫
1 はじめに
2 電磁界の生体影響と電波防護ガイドライン
3 適合性評価方法
4 ばく露評価事例
5 まとめ
参考文献
執筆者一覧
居村岳広 東京理科大学 創域理工学部 電気電子情報工学科 准教授
畑 勝裕 芝浦工業大学 工学部 准教授
名雪琢弥 一般財団法人 電力中央研究所
グリッドイノベーション研究本部 上席研究員
大島竜輝 (株)三菱総合研究所 モビリティ・通信事業本部 研究員
築山大輔 (株)ダイヘン 充電システム事業部 ワイヤレス充電技術部 開発課 課長
岡部将人 大日本印刷(株) 研究開発・事業化推進センター
事業開発本部 住まいとモビリティ事業開発ユニット WPT 開発チーム
鶴谷直樹 古河電気工業(株) エレクトロニクス研究所
エネルギーマネ ジメント技術開発部 エネルギー技術 2 課
小原大輝 古河電気工業(株) エレクトロニクス研究所
エネルギーマネ ジメント技術開発部 エネルギー技術 2 課 課長
清水 修 東京大学 新領域創成科学研究科 准教授
藤本博志 東京大学 新領域創成科学研究科 教授
遠藤哲夫 大成建設(株) 技術センター 次長
新藤竹文 大成建設(株) 技術センター 栄誉研究員
水谷 豊 豊橋技術科学大学 未来ビークルシティリサーチセンター 特任助手
澤口 実 大成ロテック(株) 技術研究所 課長代理
前村雅人 トヨタ自動車(株) パワートレーン先行制御開発部 主幹
橋本俊哉 トヨタ自動車(株) パワートレーン先行制御開発部 室長
本間裕大 東京大学 生産技術研究所 人間・社会系部門 准教授
森田賢治 一般財団法人 日本自動車研究所
環境研究部 電動技術グループ シニアエキスパート
阿部長門 東亜道路工業(株) 技術本部 執行役員 技術営業部長
日下佳祐 長岡技術科学大学 電気電子情報系 准教授
金子法子 (株)三菱総合研究所 モビリティ・通信事業本部 研究員
高橋香織 (株)三菱総合研究所 モビリティ・通信事業本部 主席研究員
和氣加奈子 国立研究開発法人 情報通信研究機構
電磁波研究所 総合企画室 室長
大西輝夫 国立研究開発法人 情報通信研究機構 電磁波研究所
電磁波標準研究センター 電磁環境研究室 研究マネージャー