TVの録画にハードディスクを使うPVR(Personal Video Recorder)と呼ばれる製品は1999年にTiVoとReplayTVの2社から登場した。2つの会社の製品は殆ど同じであるが,ビジネスモデルは大きく異なった。TiVoはWebTVと同様なライセンス提供のビジネスモデルを採用し,フィリップス,ソニーがハードウェアパートナーとなった。料金体制もWebTVと同様にハードウェアに加え,月々の電子プログラムガイド(EPG)の料金($10)は別である。これに対してReplyTVは自社ブランドで製品を売り,EPGは無償で提供した。その後,マイクロソフトもUltimateTVと呼ばれる製品を発表した。
PVRは通常のTV放送で,VOD的な機能を提供し,さらにデジタル録画によりTVとPCの融合を進める製品として大きくと期待され,アナリストはこぞってPVRを初めて成功する情報家電として褒め称えた。しかし,予想は大きくと外れ消費者はPVRを高価すぎるVTRとしてしか見ず,売上は伸びなかった。特に,ReplayTVの売上は悪かった。EPGのサービス料金を無償にした代わりに,ReplayTVの価格はTiVoより200ドル高価であり,ReplayTVにはソニー,フィリップスの持つコンシューマエレクトロニック市場でのプレゼンスが無った。2000年末の時点でReplayTVのユーザ数は40,000世帯にしか達せず,同社は2001年2月にSONICblueに吸収された。
TiVo,UltimateTVは共に機能をデジタル衛星放送のSTBに内蔵するなどの市場拡販の方法を取ってきたが,これまでに売れた台数はConsumer Electronic Associationの推定でまだ500,000台でしかない。この伸び悩んでいるPVRの市場にSONICblueは新しい製品を投入した。
ReplayTV 4000は録画時間40時間の4040から最高320時間の4320の4つのモデルがある。録画時間がこれまでの製品より大きくなっただけでなく,ReplayTVはホームサーバーと言える機能を持っている。ReplayTV 4000はイーサネットポートを持ち,ホームネットワークのある家庭であれば,PC等からReplayTV 4000のコンテンツにアクセス出来る。さらに,ビデオをIPで放送する機能を使い,ホームネットワークだけでなく,インターネットを使い,他のReplayTV 4000を持つ家庭に自家製番組などのコンテンツを放送する事も出来る。また,ブロードバンドアクセスがあれば,ReplayTV 4000で録画出来る番組はTV放送に限られず,インターネットから映画のダウンロードも可能である。まだ,インターネットによるコンテンツ提供のサービスは始まっていないが,SONICblueはオンデマンドでビデオを提供するサービスを立ち上げる予定である。
TiVo,UltimateTVはTV視聴者を狙ってきたが,これまでTV視聴者はPVRを高価なVTRとしてしか理解してくれていない。第1世代のPVRで失敗したReplayTVはTV視聴者ではなくブロードバンドユーザを狙うことでカムバックを計画している。
ReplayTV 4000はTVとインターネットを融合する意味では面白い機能を搭載している。しかし,価格も高価である。40時間のモデル4040は700ドルと競合に比べ50ドル程度高価なだけである。しかし,ホームサーバーとして考えるのであれば,より長時間得がの製品が必要になる。80時間の製品,160時間のモデルはそれぞれ1,000ドル,1,500ドルであり,320時間の4320は2,000ドルの価格になっている。
いくら増えているとは言ってもTVの視聴者数に比べれば,ブロードバンドユーザの数はまだ少ない。このユーザ層を狙いReplayTVがどれほどの健闘をするかは興味深い。