DRI テレコムウォッチャー from USA


このシリーズは毎月20日に掲載!!



開始する2つの新しいデジタル放送サービス        デジタル衛星ラジオとデータキャスティング

2001年8月20日号

テッド若山氏による米国最新レポート「デジタル放送とインターネットの融合新市場」のご案内はこちら

1997年にFCCは衛星を使ったデジタルラジオ放送を提供するための周波数をCD Radio(後にSirius Radioと社名を変更)American Mobile Radio(後のXM Satellite Radio)に与えた。受信は直径5インチ程度のアンテナで行い,100程度のCD音質のチャンネルを聞くことが出来る。Siriusは3つ,XMは2つの衛星の打ち上げをすでに完了している。トンネル,ビル等の障害物があっても動いている車からの受信をスムーズに行うために,衛星に加えて全米各地に地上リピータも設置されている。FCCの働きで,両者は同じ規格を採用しているため同じ受信機でどちらのサービスにも対応している。
サービス開始の予定は今年の前半であったが,技術的な問題から遅れていた。しかし,XMは9月にテキサス州のダラスとフォートワース,それにカリフォルニア州のサンディエゴでサービスを始め,11月には全米でサービスを提供する事を最近発表した。XMは71の音楽チャンネル,それに29のニュース,スポーツ中継等の音声主体のチャンネルを月10ドルの料金で提供する。自動車向けレシーバは普及版で250ドルする。
XMの投資家の1社はGM(5.2%を保有)であり,GMは2002年モデルのキャデラックでXMレシーバをオプションとして提供する。この他,サーブ,スズキ,いすゞ等もXMとの契約がある。GM以外では,全米で最大の数のラジオ局を持っているClear Channel Communications(8.5%)とディレクTV(6.6%)がXMに投資を行っている著名な会社である。
Siriusは衛星の打ち上げではXMより早かったがその後,遅れが出ているが,Siriusも今年以内に85チャンネルのサービスを月額13ドルで提供を始める予定である。同社の自動車会社のパートナーとしてはフォード,ダイムラークライスラー,BMW等がある。
XM,Sirius共に最初に狙っているのは自動車向けの市場である。車での長距離通勤者,キャンピングカーのオーナー,長距離トラック等車にいる時間が長い人たちが狙いである。しかし,ラジオ放送ではこれまでに有料モデルが無く,有料放送が定着できるかの疑問もある。
もう1つ話題になっているデジタル放送のサービスにデータキャストがある。TV局はアナログと平行してデジタル放送を始めている。しかし,帯域を多く必要とするHDTVの番組はまだ少なく,デジタル放送の容量は余っている。この容量を使い,PC向けへのデータ放送を提供する事にTV局は強い関心を見せている。2001年8月にノースカロライナ州Raleigh-DurhamのTV局,WRAL-TVが全米初のデジタルデータキャスティングの実験サービスを始めた。WRAL-TVの兄弟会社のDTV PlusはPC向けのDTVレシーバ,アンテナ,ソフトウェアのパッケージを395ドルで提供する。サービスは無料で提供される予定である。
データキャスティングを狙っている会社はいくつか登場しているが,大手の1つにiBlast Networksがある。iBlastは2000年3月に放送局グループ12社(Tribune Company,Gannett,Cox,Post-Newsweek Stations,The E.W. Scripps Company,Meredith Corporation,Media General,Lee Enterprises,The New York Times Company,McGraw Hill,Smith Broadcasting,Northwest)が共同出資で作った会社である。iBlastへ参加している放送局は246局に達している。
iBlastの競合の1社にはDotcastがある。同社はAngel Investors L.P.,GE Equity,Intel Capital,Investcorp,Pacific Century CyberWorks,Quantum Corp.,Tribune Ventures,Worldview Technology Partnersなどから900万の資金を得て技術開発を行っている。
データキャスティングのサービスとしは無料の各種の情報の提供から有料の音楽,ビデオファイルの提供まで様々と企画されている。しかし,普及の鍵はPC向けのDTVレシーバである。新しいPCにはDTVレシーバが標準装備となり,さらにアッドオン市場に低価格のDTVレシーバーが出回れば成功の可能性は高い。しかし,サービスが普及してもハードウェア会社の恩恵があるビジネスモデルでは無い為,ハードウェア会社が熱心に普及にたずさわるかは疑問である。

「from USA」 のバックナンバーはこちらです



弊社取扱レポートを掲載した「レポートリスト」を年4回発行し、無料で郵送配付しています。
送付をご希望の方はご一報ください。

株式会社 データリソース

東京都港区赤坂4-5-6-701(〒107-0052)
Tel: 03-3582-2531
Fax: 03-3582-2861
e-mail: info@dri.co.jp



(c) 1999 Data Resources, Inc. All rights reserved.
このサイトのすべての内容に関する著作権は、(株)データリソースに帰属しています。
データの無断掲載および無断転載は禁止しています。