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このシリーズは毎月20日に掲載!!



衛星放送とMust Carry法        衛星放送の今後への大きな影響

2001年10月20日号

 ケーブルTVが登場した1950年代はまだ地上波局の数は少なく,地上波放送を再送信するケーブルTVは地上局の普及を助けた。しかし,地上局とケーブル局が増えると共に競合が始まる。ケーブル局は地域外の局の放送の再送信を行い,地元局の再送信を止めるなどで地元の地上局に対抗を始める。この結果,FCCは1965年にケーブルTV局が地域外の放送局の再送信を行う事を限定すると共に,地元の地上局の放送は必ず放送しなければいけないと言うMust Carry規制を作る。
 このMust Carry規制は衛星TV放送事業者にも適応される。衛星TVはABC,CBS,NBC,FOX等のメージャーな地上局だけの放送を選んで再送信をする事は出来ず,地上波の再送信を行うならその地域すべての局を再送信する必要がある。この規制により,DirecTV,EchoStarは地上局ネットワークの放送をする事が出来ず,衛星放送の加入者の多くは地上局の為にケーブルTVも併用する必要があった。 地域電話会社と同様に地域独占企業であるケーブルTV事業者に対する競合として衛星TVサービスを普及させる為に米国議会は特別な期間限定の措置として衛星事業者が一部の地域局だけの放送を選んで再送信する事を認めた。この措置により多くの地域で衛星放送で大手地上局ネットワークのチャンネルを見ることが出来るようになった。この結果,衛星TV放送の普及が進むだけでなく,ケーブルTV事業者の加入率が若干ではあるが減り始めた。
 しかし,この特別措置は2002年1月1日で期限が切れる。これ以降,衛星TV事業者にもMust Carry法が再度適応される。衛星放送事業者が提供可能なチャンネル数は限定されている。大都市には20以上の地元放送局があり,いくつかの大都市に対して地上波放送のサービスを提供するだけで容量は使い果たさせてしまう。Must Carryに対応するためには衛星事業者は地上局再送信のサービスを地域限定して行わなければならなくなる。
 現在,衛星TV事業者はMust Carry規制は憲法違反だとして訴えを起こしている。しかし,Must Carry規制は地元放送局の再送信を強制しているのではなく,公平な競合の為に再送信をする局を選ぶことが出来ないと決めている物であり,法廷がこれを違憲だと判断する可能性は低いと見られる。Must Carryが適応される事は衛星TVサービスへ大きなダメージを与える。時間はあと数ヶ月しか残されていなく,この問題は注目される。

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