DRI テレコムウォッチャー/IT ウォッチング


このシリーズは不定期に掲載!!



  WindowsXPのインパクト  (ITアナリスト 志賀竜哉氏)

2001年10月20日号


WindowsXP は11月16日の日本での発売を控えているが、過去のWindows95や98の発売時とは違い、比較的冷静な受け止め方をされている。米国では10月16日の発売としていたが、買い控えを回避するため、大々的な宣伝をしないという条件で実際には9月下旬にひっそりと店頭に登場している。しかしこれといった大きな効果も見られなかったためかWindowsXPへのパソコン業界からの期待は悲しいほど低い。おそらくは低迷するパソコンの市況回復に大きなインパクトはもたらさないとうのが大方の見方だ。

 まずはこれまでのパソコンのオペレーティング・システム(OS;基本ソフト)の持っていたテーマをふりかえってみよう。

MS-DOS x.x:パソコンのファイル管理を改良

Windows3.1: パソコンにマルチメディア機能の付加

Windows95:パソコンに本格的グラフィカルな操作方法を取り入れる

Windows98:パソコンのインターネット機能強化

WindowsMe:パソコンと家電製品との接続

WindowsXP:ブロードバンドを生かす機能を搭載

 Windows95までは、OSはパソコンの性能向上に直接貢献しているが、Windows98以降はむしろインターネットをはじめ外部環境との接続に主眼を置いた進化に変化している。なるほどこの間にネットビジネスの隆盛と崩壊が起こっている。つまり、Windows98以降はパソコンと外界との橋渡しに主眼が置かれており、そのとき以来パソコンOSはむしろその外側の産業へ貢献するようになり、従来ほどパソコン産業に直接貢献するメカニズムは希薄になってきている。WindowsXPではブロードバンドがテーマだが、過去ほどパソコンの売上増に結びつかないだろうといった見方が多いのはこのためだ。

 今、IT業界のキーワードはブロードバンドだ。企業においても家庭においてもネットワークの用途を一変させる可能性を秘めており、ブームとすら言える。WindowsXPには音楽や映像、写真などリッチなコンテンツを楽しむ機能や、テレビ電話やIP電話などを使う機能が同梱されており、OSとしての本文を大幅に逸脱(今に始まったことではないが)しているといえなくもない。ともあれ、ブロードバンドの普及により従来の紙芝居的インターネットからダイナミックなインターネットに移行が促されることになり、人々のライフスタイルを大きく変えてしまうことは間違いない。実を言うと、今回XPに搭載される大半の機能は既存のWindowsパソコンでもソフトの追加でいくらでもできる。重要なことはこれらの機能がXP搭載パソコンには最初から搭載されていることであり、XP搭載パソコンがそのワンストップショッピングとしての役割を担うことだ。

 今日のパソコンのキラーアプリケーションはインターネットだが、これを一般ユーザーは使うときだけ接続して時間を気にしながら使っていた。これではライフスタイルの変化をもたらしはしない。これまでブロードバンドユーザーといえばインターネットのヘビーユーザーが中心であったが、今日では月額3,000円程度で安価に加入できるようになっており、XPパソコンを契機に一般ユーザー層にも拡大するきっかけを与えてくれる。つまり、WindowsXPは過去のWindows95ほどのインパクトはなくとも、その後のブロードバンド加入との相乗効果にも寄与し、キャリア、ブロードバンド・サービス業者、コンテンツプロバイダーなどまずはパソコン以外の産業を大いに活性化し、ひいては再びパソコン業界の活性化に結びつく点で、そのインパクトは長期的に受け入れられるべきであろう。

 とはいうもの、今日の米国テロに起因する社会不安の消費面への悪影響あまりにも大きい。しかし、テロ直後、ニューヨーク近辺では電話や携帯電話は使い物にならなかったが、面的なネット上を迂回して進むインターネット経由の電子メールは災害に強いインフラであることが証明されたし、電子メールは細菌感染の心配はない。インターネットはライフスタイルを変えるだけでなく、テロに強いインフラであることの理解こそがWindowsXPの真のインパクトかもしれない。

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