DRI テレコムウォッチャー/IT ウォッチング

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  車がインターネット売買されると次に来るものは/米国最新ECトレンド
(ITアナリスト 志賀竜哉氏)

2002年3月25日号

 パソコンの世帯普及が7割に迫り、もはやインターネットが生活必需品と言っても過言ではない状況になってきた米国。インターネットによるショッピングもまた人々の生活と深く関わり合うようになってきた。特に最近米国では自動車をインターネットで購入するユーザーが増えてきている。ここではその検証とともに、その次に来るトレンドを予測する。

■ 好調だった米国の自動車ネット販売

 米国商務省の発表によると昨年2001年の米国の電子商取引高は、小売部門、いわゆるBtoC部門だが、325億6,600万ドル、前年比19%の増加であった。リサーチ会社や業界筋などのもっぱらの予想ではおおむね40%の伸び率であったが、テロの影響や実体経済が不振だったこともあり、期待された伸びに届かなかった。しかし、こういった中で顕著な伸びを示し、今後のライフスタイルやネット取引動向に大きな影響を与えそうな兆候が見えてきた。自動車のネット販売である。実は自動車のネット販売は、金額が大きいだけに売り手側の期待も高く、黎明期には多くの自動車販売Webサイトが乱立したが、昨年初頭のドットコムバブルの崩壊とともに撤退や買収が相次いだ。昨年DriveOff.comはCarpoint.comに買収されたし、Bestoffer.comも昨年後半に営業活動を停止している。

 しかし、9月のテロ以降、一部の間に飛行機による旅行を控え、車を購入する傾向が一時的に高まったことで、車購入のWebサイトが改めて注目された。伸び率としては全体の19%を大きく上回る38%で、結果的に米国のEC市場の牽引車となった。この傾向は今年になっても好調だし、どうやら単にテロの影響からの反動だけと言い切るわけにはいかなそうだ。

■ なぜ車のネット販売が進んだか

 ではなぜ、車をネットで購入する比率が増えてきたのか。以下の3つの理由に分析できる。

  1. ユーザー層の裾野拡大

  2. 販売サイドの進化

  3. カスタマイズの利便性

 まず第一に、これまでネットで車を買うユーザー層は新車を好んで購入するいわばインテリ層というか高所得層が多かった。ところがパソコンが70%の家庭に普及してしまった昨今、実は中古車を購入するユーザー層にネット購入の比率が高くなっている。つまりさほど所得も社会的地位も高くない普通の人々が中古車を手に入れる手段としてネットを活用し始めた。購買層の裾野が広がったわけだ。

 二つ目に、車の販売サイトに買収、淘汰の波が訪れたと指摘したが、実はこれはWebサイトの強化再編を意味した。車は車本体だけでなく、パーツ、アクセサリ、消耗品、サービスなどが絡んだ複雑なシステム商品であり、これまでは本体とパーツ類がばらばらに販売されユーザー本位と言えなかったものが、買収淘汰を通じてユーザーにワンストップショッピング的なトータルな利便性を提供する機能を持つようになってきた。

■ パソコンのダイレクトビジネスと同じ手法

 第三に、車販売Web上のツールキットを使って、色、サンルーフなどはもとよりメーカーオプションばかりか、タイヤ、ホイル、座席シートやカーナビ、アクセサリパーツなどこまごまとしたディーラーオプションの果てまでをユーザーが完全に自分の好みに合わせて組み合わせることが出来るようになった。これは上記の販売サイトの淘汰と深く関連している。このことはパソコンをハードディスクやメモリ、モニタなど細部までを完全に顧客の好みに合わせて作り上げることで成功したデルコンピュータのビジネスモデルを想起させる。パソコンの場合は最もインターネットに精通したユーザー層に支えられていたため、Web販売が早くから普及したが、これと同じことが車の世界でも起こり始まったことが重要なポイントだ。

 パソコン販売のケースと異なるのは、デルコンピュータは自社で組み立て自社で直接販売したダイレクト方式を取ったが、車のメーカーはそこまで細かいことまでは出来ず、細かいことはディーラー・オプションとして付加するため、この市場はメーカーダイレクトではなくディーラーの独壇場になりそうなことだ。そのため、パソコンのダイレクト販売で起きたディーラー中抜きへの反発は起こらず、あくまでもディーラー間の競争にとどまる。逆にディーラー間の激しい淘汰を引き起こす可能性をはらんでいる。

■ モバイル・サービス・ビジネスの起爆剤

 で、何が起こるかだが、今、車のWeb販社は個人向けのプレミアム・サービスを行うホームページの充実に取り組んでいる。これはいわば販社のCRMであり、車の様々なメンテナンスや位置情報などサービス情報を携帯電話やPDAなどモバイル・デバイスを通じて囲い込んだ顧客にきめ細かく流す仕組みだ。これまでモバイル・ビジネス進展ではパッとしなかった米国だが、車ユーザーがインターネットに深くかかわることで、車ユーザー向けのモバイル・サービス市場が急拡大する可能性が出てきたといえる。車社会ならではの進化プロセスと言えそうだ。

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