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  動き出した日本のホットスポット・サービス  (ITアナリスト 志賀竜哉氏)

2002年2月25日号


 ユビキュタス・コンピューティングのインフラともなる無線LANを活用したホットスポットサービスが動き出した。ホットスポットは米国では5年後には3000万人が利用するようになるとも期待され、わが国ではiモードやFomaなど携帯電話の情報サービスに大きなインパクトを与えるものとして注目されている。

■ コーヒーショップで

 コーヒーチェーン店のプロントが直営店として秋葉原にオープンさせた「リナックスカフェ・プロント」は1月から新しいタイプのインターネットカフェとしてホットスポット・サービスを開始した。店には2台のノートパソコンが用意してあるが、802.11b対応の無線LANカードを差し込んだノートパソコンさえ持参すればよい。とりあえず試験的に8MBのADSL回線を1回線確保し、AC電源も10箇所以上用意、ホットスポットカフェとしてスタートを切った。お店で用意した簡単なマニュアルに書いてあるログインIDとパスワードを入れるだけ高速インターネットサービスが受けられると言う。
 料金はこれまでと同じコーヒー代だけ。何時間いてもかまわないと言うが、実際にはビジネスマンが会社に緊急のメールをしたり、ちょっとした情報収集を済ませて、そそくさと "本業" に戻っていくため、無線LANのおかげで客の回転が悪くなったと言うことはないという。むしろビジネスマンの間で「あそこに行けば無線LANがつかえる」という話が伝わり、それで集客効果が高まることを期待していると言う。プロント本社では今後は立地条件が悪くとも無線LANで集客できる店舗を展開したい考えで、要は客寄せの道具に使いたいという。問題は顧客サポート。今回秋葉原に出展したものここがポイントだ。秋葉原の顧客層であればパソコンには詳しい人が多いため、従業員がテクニカルサポートに時間を割かれなくて済むという計算もあった。従って、客層も考慮した上でのホットスポット展開がなされるであろう。

■ 23区や山手線で

 もうひとつは、日本テレコムがJR東日本と共同で2月から山手線主要駅での ホットスポット 接続実験を公開した。 日本テレコムのインターネット接続サービス「ODN」の加入者が対象で、ノートパソコンとプロント同様、802.11b無線LANカードを持参すれば、簡単な接続先の設定で無料のインターネット接続サービスを利用できる。現時点では東京、新宿、上野、渋谷、品川の5駅。ちなみに東京駅では3カ所がホットスポット。 新幹線乗客用の待合室「びゅうスクエア」、新幹線の23番ホーム、駅構内のカフェ「カフェ・グラン」。利用可能を示すシールが各所に張られているのでわかりやすい。
 NTTコミュニケーションズは4月から23区の駅、繁華街など諸々のスペースで1.5MBのホットスポットサービスを行う。こちらは強気なことに月額2,000円の有料版だ。また、ベンチャーのモバイルインターネットサービス(MIS)社も23区内の各所で有料サービスを開始する計画がある。

■ あくまでも本業で利益を

 実は米国ではホットスポットでは一足先行しており、Mobilesta社という事業者がスターバックスやホテルに有料のサービスを昨年から提供していた。しかし利用状況が芳しくなく、秋以降はテロの影響もあり結果的に莫大な先行投資に耐え切れなくなり、10月にあえなく敗退している。どうやらパソコン天国の米国でも有料のビジネスモデルは難しいのがその教訓だ。プロントやODNのやり方はその教訓を生かし、ホットスポットで利益を上げるのではないところがポイントだ。プロントはあくまでも本業のコーヒー店の集客が主体であり、日本テレコムは自社のポータルサイト・ODNの集客が狙いだ。直接ホットスポットから利益を上げ、一気にホットスポットビジネスを開花させたいNTTコミュニケーションズやモバイルコミュニケーションズ社の気持ちもわからないではないが、ノートパソコンを戸外で使う人の普及、バッテリー時間の問題、Webメール利用者の普及状況などを考えると、まだ時期尚早。本業をサポートする使い方が今のところは無難だ。ちなみに、秋葉原の「リナックスカフェ・プロント」はWindowsパソコンでもOK。近い将来はリナックス搭載の安価なパソコンを大量に並べ、韓国のPC房(バン)のようなスポットにすることも模索していると言う。



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