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  インスタント・メッセージングがビジネスに与えるインパクト  (ITアナリスト 志賀竜哉氏)

2002年1月25日号


不透明なIT業界だが、その中でも唯一将来を約束されたキラーアプリケーションにインスタント・メッセージング(IM)がある。今年はIM元年といわれ、そのビジネスへの活用が期待され、電子メールが与えた以上のインパクトを与える可能性がある。さらにブロードバンドの進展は常時接続で威力を発揮するIMの普及に強い追い風ともなっている。

■ 2002年はIM元年

 確かに今年はIM元年といわれるが、IMは全世界ですでに1億人以上が使っており、元年というのはちとおこがましい。しかし、これまで女子高生らがお友達とチャットしていた次元から、本格的なビジネス利用が期待されるという点で、またブロードバンド・インフラが整うという2点でIM元年といえる。
 そもそもIMは1997年ごろイスラエルのMirabilisという小さな会社がI seek you をもじってICQという個人用のチャット・プログラムを開発したのが起源だ。それをすでに独自にAOLインスタント・メッセージ(AIM)で先行していたAOLが1998年に買い取って相互接続を行い、会員数延べ1億5,300万人(AIM:9,100万人、ICQ:6,200万人)の最大勢力を作り上げている。それに次ぐのがYahoo!メッセンジャーの約6,000万人、マイクロソフトのMSNメッセンジャーが約5,000万人といわれており、この3大ポータルがIMの覇権争いに鎬を削っている。
 IMの覇権争いが激化する理由はこうだ。IMを利用するには個人情報の登録が必要だが、それをつかって個人認証や電子商取引の決済、またはシングルサインオンで多くのWebアプリケーションやWebサイトが簡単に利用できる。巨大なユーザーベースを持つことはNet社会での覇権争いに直結するというわけだ。また、音声や動画像などをやり取りできる次世代のコミュニケーションツールとしての本質的な価値も忘れてはならない。AOLは先ごろNovel社と提携しAIMを同社のディレクトリサービスにバンドルさせビジネス市場への進出を開始しており、企業における電子メール利用を補完する形で使われることになるだろう。実際ブリティッシュ・オキシジェンが社内システムに導入しており、効果のほどが期待される。
 余談になるが、3大ポータルの覇権争いを尻目に、ジャバーという組織はオープンソース方式でIMを生臭い覇権争いから脱却させ、リナックスのようにただで誰でもがつかえるようにしようという動きもあることを付け加えておく。

■ ビジネスに与えるインパクト

 IMがビジネスに与えるインパクトとして、まず第1に電子商取引(EC)におけるカスタマーサポートに役立つといわれる。たとえば、とあるアパレルメーカーが過去半年間に一度も買い物をしてないお顧客にだけに期間限定30%スペシャルディスカウントセールを行うとしよう。キャンペーンURL付きのメールを受け取った顧客はサイトに入り、気に入った服があったがXLサイズの表示がなかったとき、あるいは表示ない色がいつまでだったら取り寄せられるかなどの質問がしたくなったときなど、IMで販売(代理)員とリアルタイムの会話で答えを得るケースだ。
 また、リース会社がB2Bコミュニテイ・ポータルなどで、特定の製品の特性についてもっと知りたいとき、IMの“在席通知機能”で顔見知りの営業マンを選び出し、会話するというもの。知っている営業マンが不在のときはいるときを見計らって通知すればよい。
 オフィスではこの在籍通知機能が威力を発揮する。誰が在席しているかデスクトップ上で一目でわかるため緊急会議を召集できたり、ミスを犯した部下が帰社したのを見計らって、怒鳴りに行ったりできる。オフィスでの利用はともかく、ECでの利用が進むと、ECサイトは成約率を高めるため、あるいはカスタマーサポートを強化するため、おそらくコールセンター方式のIMエージェントが必要とする可能性が高い。そうするとある程度の商品知識をもったオペレータがコールセンター側に要求されるかもしれない。結果的にこれまで不案内であったユーザーでもオンラインショッピングが出来るようになったり、無味乾燥なオンラインショッピングが血が通ったものとなり、EC促進の牽引材料になる可能性もある。

■ 結論

 要するにIMはEC、ポータル運営、オフィス内でも電子メールを補完する形でメッセージにリアルタイム性や生(ナマ)感覚、フェイス・トゥ・フェイス感覚を吹き込むことができ、ビジネスにおけるコミュニケーション・スタイルも大きく変わることが考えられる。日本のオフィスでも電子メールが一般化し社内コミュニケーションのスタイルが一変した。それを第1フェーズとすれば、電子メールを補完するIMは第2フェーズのキラーアプリケーションとなることは間違いない。



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