| 増えるRLECのビデオサービス - ビデオサービスに積極的な農村地域の電話事業者 |
2002年12月20日号
1990年代に7つのベル系地域電話会社,それにGTE等のいくつかの独立系事業者がこぞってケーブルTV事業者に競合するビデオ事業に参入をした。しかし,ケーブルTV事業者から市場は奪うことは予想以上に困難であり,地域電話会社の多くは1990年代後半にはビデオサービスからの撤退を行った。現在も続いている大手ILECのビデオサービスは下記の3つだけであり,どれも拡張は行われていない。
- BellSouthはアトランタ近郊でFTTCのネットワーク上でケーブルTVサービスを提供している。加入者は5万程度。
- QwestはフェニックスとデンバーでVDSLを使ったビデオサービスを提供している。
- Verizonはベンチュウラ市(カリフォルニア),クリアウォータ(フロリダ),ホノルルのケーブルTV事業を行っている。Adelphiaに売る予定であったが,同社の破綻で契約は破棄された。
しかし,最近また電話事業者によりビデオサービスへの参入が盛んになっている。ビデオ市場への参入を行っているのはRLEC(Rural Local Exchange Carriers)と呼ばれる農村地域の独立系地域電話会社である。例えば,テキサス州ヒューストン南100キロ離れたLivingston市周辺に15000の加入者を持っているLivingston TelephoneはADSLを使い,インターネットアクセスだけでなくVODを含めたビデオサービスを提供している。
アイオワ州の150の小さな独立系の地域電話会社で構成されているIowa Network Services(INS)はそのメンバーの事業者のビデオ事業参入を支えるためにビデオコンテンツの提供を始めた。INSメンバー会社が共同で運営している光ファイバーバックボーンでビデオコンテンツを送り始め,現在,人口8200のクリアレークと人口670のベンチュラ等の地域電話会社がビデオサービスを提供している。
今,RLECによるビデオサービスへの参入が活発になっているのにはいくつかの理由がある。
- ネットワークのアップグレードが行われている。都市部のネットワークはその地域の拡大と共にアップデートされてきたが,農村部では長いこと無視されてきたネットワークも多い。新たなサービス提供のためにアップグレードが不可欠になっている。ILECが積極的にネットワークをアップデートしているケースもあるが,新たに参入したCLECが新しいネットワークを作るケース,あるいは自治体がネットワークに投資するケースも多い。
- 市場機会がある。都市部ではケーブルTV事業者の競合強い。しかし,農村部ではケーブルTV事業者のネットワークも古く,多チャンネルあるいはブロードバンドサービスは提供出来ていない事が多い。電話会社がブロードバンドアクセス,ビデオのサービスを提供し,市場を奪える可能性は都市部より高い。
- 政府の助成がある。2002年に通過したFarm Security and Rural Investment Act of 2002の中に農村地域のブロードバンド構築に政府予算を最低2000万ドル提供するとの項目盛り込まれている他,いくつかの農村地域の通信を高度化するための援助を目的とした法案が提出されている。
- コストが低い。殆どのRLECはビデオサービスの提供にADSLを使っているのでコストが低い。ADSLベースのビデオサービスは1つの回線で2つのテレビのサポートが限度などの弱点はあり,競合が激しい都市においての競合性は弱いと思われている。しかし農村地域では競争性はある。Minerva等ADLSベースのビデオソルーションを専門とする会社もあり,導入は困難では無くなっている。
大きな都市ではケーブルTV事業者がネットワークのデジタル化を進め数百チャンネルのサービスを行っており,またデジタル衛星TV事業者も主要都市向けにはその地域の地上波局の再送信をしており,電話会社がビデオサービスのシェアを奪うことは容易ではない。また,人口が多いとシステムも複雑となり投資額も多い。このため,RLECの動きはそのまま大手ILECにあてはまる物ではない。しかし,いったん消え失せたと見えた電話事業者によりビデオサービスの提供はカムバックし始めている。
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