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3大ネットワークであったABCの存在危機 - ディズニーには重要なブランドでは無くなったABC

2002年10月20日号

 アメリカのTVネットワークといえば,ABC,CBS,NBCであった。ABCはNBCと共にRCAが1927年に作ったラジオネットワークのパイオニアであり,1953年にはテレビ放送を始めた。1996年にディズニーがABCを買う。ディズニーはDisney Channel,ESPN等でケーブル向けのネットワークでテレビネットワーク市場に参加しており,ABCの買収でその地位を高めた。買収の時点でABCはトップネットワークの座を奪われていたが,2000年期には1位に返り咲く。
 しかし,その成功は短期であった。2001年には2位に落ち,2002年には3位に転落し,1986年に登場したFox Broadcastingにトップ3の地位を狙われ始める。2002年期の視聴率はNBCが8.8%,CBSが8.1%,ABCが6.3%,そしてFOXが5.7%であった。後発のFOXは若者に受けるプログラミングを主体にして,視聴率を伸ばしてきたのに対し,ABCはヒット番組を作れずにいる。2003年期は始まったばかりであるが,ABCに視聴率は芳しくなく,トップ3の地位をFOXに明け渡す危機に達している。
 ディズニーはABCのブランド力を求めたが,ケーブルTVの力は強まり,ブランド力ではDisney Channel,ESPNの方がABCより高まり始めている。ディズニーはテレビネットワークのブランドとしてはABCではなく,DisneyとESPNに力を入れる決定をした。ディズニーのCEO,Michel EisnerはABCを独立組織ではなく,ケーブルネットワークの共同経営にする計画を発表した。
 この計画ではABCの独立管理は無くなり,そのプログラミングの責任はその時間帯(プログラム内容)にマッチするディズニーのケーブルネットワーク部門に分割される。例えば,ABCのスポーツ番組はESPN制作になり,土曜日午前などの子供向けの時間帯はDisney Channel,Toon Disney等の担当になる。昼間のメロドラマはSoapNetに任され,プライムタイムの運営はFoxから購入し,ABC Familyと名前の変わったばかりの元Fox Family Networkが行う。ディズニーにはニュース番組制作を行えるネーブルネットワークは存在しないく,ABC Newsは残される可能性があるが,ディズニーはAOL Time WarnerのCNNにABC Newsを依託する交渉も行っている。
 この組織変更が行われれば実質的にABCの存在は無くなり,ディズニーのケーブルネットワーク部門の共同運営になる。EisnerはこれによりABCの独自性が無くなるわけではなく,低いコストでより良いプログラムの制作が可能になると言っている。しかし,ABC系列局はこの計画には賛成していない。
 ABC提携局はこの組織変更により,ABCは徐々にディズニーのケーブルネットワークの広告の場となり,オリジナル番組が消えていくことを心配している。ABC提携局はディズニーがABC Familyを始めたことで,ABCの最新番組がどんどんとケーブルのABC Familyで再放送されるようになり,ABCの価値が下がることを以前から気にしてきた。ディズニーがABC提携局と行った契約では,ABC Familyが放送出来るABCの新しい番組の再放送は25%に限られている。しかし,この契約の有効期限は2年間でしかない。ABCがケーブルネットワークの運営になることで,今後ABCの制作番組がどんどんとケーブルチャンネルで再放送されるだけでなく,逆にABCがケーブルネットワークで作ったオリジナル番組の再放送の場になってしまう可能性もある。
 数多くのケーブルTVネットワークが登場しているが,地上波ネットワークの地位が高かった。しかし,トップ4の地上波ネットワークの合計視聴シェアは2001年期で47%にさがり,UPN,The WB等のマイナーな地上波ネットワークのシェアを入れることでやっと過半数を確保している状態である。ディズニーがABCの独立運営を止める計画は,地上波ネットワークとケーブルネットワークの地位逆転の前兆と言えるであろう。

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