DRI テレコムウォッチャー  from USA

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ビデオサービスに否定的になったQwest  ベル電話会社によるビデオへの参入は終わりか

2002年9月20日号

 地域電話会社は1990年代中期にビデオサービス市場に強い関心を示した。ベル電話会社によるビデオサービスの提供は規制上不可能であったが,各社は規制の範囲で可能なテストサービスの実施,それに関連企業の買収を行った。しかし,地域電話会社のビデオサービスに対する情熱は徐々に薄まり,通信法が改正されベル系電話会社のビデオ事業参入が可能になった時には,殆ど消えていた。例外はAmeritechとUS Westであった。Ameritechは電話回線とは別にHFCのネットワークを作り,ビデオサービスの地域を広げ,US WestはVDSLの技術を使ったビデオサービスに力を入れていた。

 AmeritechはSBC Communicationsに1999年買収される。SBCはビデオサービスに対していち早く否定的になった会社であった。1997年にPacific Telesisを買収すると,すぐにPacific Bellが持っていた南カリフォルニアの無線ケーブルTV会社を売り,サンホゼで着工していたHFCのネットワーク作りを中止した。Ameritechの行ってきたビデオ事業の拡張はSBCによる買収で中断され,さらに事業は売りに出される。

 これにより,ビデオサービスを行っているベル電話会社はUS West(2000年にQwestに買収される)だけになった。US WestはデンバーとフェニックスでVDSLを使ったビデオサービスを行ってきた。他のベル系電話会社がビデオサービスを止めている中,US Westは独自の方針を持っていた。これは,ビデオサービスに限ったことでなく,US Westはその兄弟と言える他のベル系電話会社とは違う戦略を持つことで知られてきた。ビデオサービスに対する関心と同様に,1980年代の後期にベル系電話会社はビデオテックスのサービスに熱心であった。しかし,規制上コンテンツの提供をすることが出来ず,ベル電話会社は1991年にはオンラインサービスへの参入は諦めた。例外は,US Westで他がサービスから撤退する中,フランステレコムとのジョイントベンチャーとMinitelを米国で売り込むジョイントベンチャーを作り,この事業は1994年まで続いた。

 2000年にQwestに買収された後も,そのVDSLベースのビデオサービスは継続して行われてきた。しかし,最近にマイアミで行われたMorgan Stanley主催のGlobal Communication Conferenceにおいて,QwestのCEO,Richard Notebaertはビデオサービスに対して否定的な意見を述べた。ビデオサービスから撤退を発表した訳ではないが,電話サービスとビデオの統合の必要性は無いとの意見を述べ,Qwestが今後ビデオサービスを拡張することは多分無いであろう。

 Notebaert氏は問題は誰がビデオを提供するかではなく,誰がデータサービスを提供するかであり,戦いはDSL対ケーブルモデムだと述べた。これはコンテンツは何でも良く,パイプを提供することが重要だと言っているように取れる。ビデオサービスに参入するに当たり,ベル電話会社はコンテンツ供給の会社もジョイントベンチャーで作った。しかし,これまでコンテンツ提供は規制上出来なかった,ベル電話会社にはその経験が無く,これらジョイントベンチャーは成功しなかった。結局,ベル電話会社の態度はコンテンツは諦め,やはりパイプの提供に徹する方向に動いている。

 しかし,地域電話会社(DSL)の競合がケーブルTV会社(ケーブルモデム)であれば,ケーブル事業者の考えは大きくと異なっている。ケーブル事業者に取って重要なのはコンテンツであり,インターネットアクセスもケーブルTV電話も新しいコンテンツとしてとらえている。地域電話会社は媒体を提供し,それがいかに使われるか(コンテンツ)には自ら関わらないのに対して,ケーブルTV会社は新しい付加価値(コンテンツ)を加えることでその事業を広げようとしている。どちらの戦略が成功するかは分からないが,ベル電話会社とケーブルTV事業者の戦いは単に技術(DSL対ケーブルモデム)では無く,そのビジネスへのアプローチになってきている。

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