| 競争が増える衛星デジタルラジオサービス - XMに続いてSiriusもサービスを開始 - |
2002年7月20日号
1997年にFCCは衛星を使ったデジタルラジオサービスの許可をXM Satellite RadioとSirius Satellite Radioの2社に渡した。衛星デジタルラジオサービスはCD並の品質の音を提供出来る。
Sirius社は2000年に,XMより早く衛星の打ち上げに成功し,2001年中にサービスを開始する予定であった。一歩遅れて2001年1月に衛星の打ち上げを終わらせたXMであったが,テストサービスはSiriusより先に始め,2001年9月にサービス開始の目標を立てた。しかし,9月11日のテロ事件でサービス開始は11月に延期になった。
XMより先にサービスの開始を狙ってきたSiriusであったが,同社のレシーバで使われているLucent社のチップセットの問題等から商業化は大きな遅れ,さらに景気の冷え込みも手伝い,Siriusのサービスは暗礁に乗り上げた。昨年の11月にSirius社はCEOを交代した。新しいCEOにはThomson Multimedia時代にDirecTV向けのSTBの市場投入に関わり,その後Global Crossingに行ったJoseph Claytonが就任した。これを機にSirius社の動きは速まり,2002年7月についにそのサービスが全国的にスタートした。
XM,Sirius共に衛星ラジオの主要マーケットは自動車向けだと見ている。衛星ラジオのメリットは音質以外に全米どこに行っても同じ局を聞くことが出来ることである。長距離トラックの運転手,あるいはキャンピングカーのオナー,それに長距離通勤者が運転中に局を変える必要が無いことで興味を持つと思われている。しかし,衛星だけで全米をカバーすることは出来ない。トンネル,渓谷,高層ビル等で衛星の信号は妨害されるので,地上リピータが必要となる。XMラジオは2つの衛星に加えて,800以上のリピータを設置している。Siriusは3つの衛星を使うことで,リピータの数は92と少ない。
自動車市場を狙うには自動車メーカーとの関係が重要になる。XMはGMからの投資を受け,GMと独占契約を結んでいる。この他,SaabもXMの採用を発表している。Sirius社はDaimlerChrysler,Ford,VW/Audi,BMW,日産と契約を結んでいる。
サービス開始ではXMに先を越されたが,その分SiriusはXMのサービスへの市場の反応を見ることが出来た。サービスの内容は共に60程度の音楽チャンネルと40程度のニュース,トークショー,スポーツ等のチャンネルで構成されている。XMはサービス価格を月9.95ドルに設置したのに対して,Siriusは3ドル高い,12.95ドルになっている。SiriusはXMのユーザの多くはサービスが有料であることから広告は無いと信じて加入したが,広告があることで不満を持っていると語っている。SiriusのサービスはXMより高価であるが,その60の音楽チャンネルはすべて広告無しで放送されている(音楽以外のチャンネルには広告がある)。
XM,Sirius共に2005年の加入者数3百万を目的にしている。しかし,XMの加入者数はまだ136,500でしかない。サービス事業者が2つになったことで,これまで以上に目に付くようになり,また2003年モデルから新車のオプションとして積極的にオファーされることで加入者数は大きく増えると期待されている。しかし,衛星ラジオのアピールはIridiumと同様にニッチであり,有料ラジオがマスマーケットに受けいられることへの疑問も強くある。また,大きな期待が寄せられていた自動車向け情報システム(Telematics)への関心も冷えており,自動車オーナー向けへの付加価値サービス自体の市場性自体への不安視もある。
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