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デジタルTV放送の加速化を狙うFCC  Powell FCC会長の勧告

2002年4月20日号


 地上波TV放送のデジタル化は2002年5月1日までに通常の放送局のすべてが完了し,2003年5月には残りの非営利放送局のデジタル化も終わり,2006年にはアナログ放送は終了する予定になっている。しかし,全体の3分の2にあたる877の営利放送局は2002年5月1日までにデジタル化を行うことは不可能であり,延期の許可をFCCに申請している。このままでは予定通りに2006年にアナログからデジタルへの移行を完了させることは不可能と思われる。

 問題は放送局のデジタル化が遅れていることだけでは無い。デジタル放送向けの番組が無ければデジタル放送に対する消費者の関心を増やすことは無理であり,またデジタル放送向けTV受信機が低価格で提供され無い限り,視聴者は増えない。また,TV世帯の75%近くはケーブルサービス,あるいは衛星放送サービスに加入しており,デジタル地上波放送がこれらのサービスで再送信されなければ,地上局のデジタル化は全く無意味である。

 FCCは放送局に対してはデジタル化の予定を義務付けてきたが,TV業界の他のプレーヤに対してはデジタル化に対する規定は無かった。しかしこのデジタル化の大きな遅れから,FCCのPowell会長はTV業界のプレーヤに対して,自主的なデジタル化の目標を勧告した。その内容は下記の通りである。

  • 番組制作者: 4大ネットワーク(ABC,CBS,NBC,Fox)それにケーブル局のHBOとShowtimeはアナログ放送をデジタルで流すだけでなく,この秋からHDTV,付加価値DTV,マルチキャスト,インタラクティブTVなどのデジタル技術を生かした番組をプライムタイムの50%で放送する。

  • TV放送局:トップ100マーケットで放送する4大ネットワーク提携の放送局は2003年1月1日までに信号の劣化無しでデジタル放送を行う。

  • ケーブルシステム: デジタル化されているケーブルシステムは放送局,あるいは番組提供者に対して無償でプライムタイムの50%にデジタル番組を放送するチャンネルを最大5つは提供しなければならない。これらチャンネルは地上局の再送信に限定されない。事業者は加入者に対してHDTV対応のSTB,それにDTV対応のTV受信機のサポートを提供しなければならない。

  • DBS事業者: 衛星TV放送事業者はプライムタイムの50%にデジタル番組を放送するチャンネルを最大5つ提供しなければならない。

  • TV受信機メーカー: 2004年1月1日までに36インチ以上のTV受信機の50%はDTVチューナを内蔵し,さらに2005年1月1日にはその率を100%にし,また13インチ以上のデジタル化も2006年12月31日には100%にしなければならない。

 FCCは自主的な参加を求めているが,米国議会の一部は自主的な物ではなく,立法措置も検討している。業界はデジタル化が規制されることは望んでいなく,多くはこの自主的な勧告を受ける姿勢を示している。しかし,TVメーカーの産業会,Consumer Electronic Industries Associationは受信機のデジタル化を義務付けることはTVセットの価格を上げる物であり,消費者のためにはならないと反対するなど,一部はこの勧告に消極的な態度を見せている。

 しかし,最大の問題はケーブルと衛星放送事業者への指示になるであろう。TV世帯の75%はTVを地上局ではなく,ケーブル,あるいは衛星放送から受信している。これらの事業者が地上局のデジタル番組を再送信しない限り,地上局がいくらデジタル化を行っても無意味である。Powell会長は最大5つのデジタル番組の放送をするチャンネルを提供することを求めている。ケーブル,衛星放送事業者は限りのあるチャンネル容量を無償でアナログ放送と殆ど同じ内容を放送するかも知れないデジタル放送に提供することは無意味だと反対している。逆に,地上局側は,Powell勧告はデジタル番組を提供するチャンネルを求めているだけであり,ケーブル,衛星放送事業者は地上局のデジタル番組の再送信を行わない可能性もあるとして,この勧告は不十分だと考えている。

 TV世帯の25%しかが受信していない地上波をデジタル化すること自体が無意味かも知れない。しかし,貴重な周波数帯域をTV局に提供してあり,代わりに返還されるアナログ放送の帯域を売ることで得る収入をあてにしている米国議会は何とかして地上局のデジタル化を行わなければならない。

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