米(ベイ)エリアIT通信


パートナーを大切にするPRM

2002年12月号

 今月のMarket Snapshotでは近年、注目されているPRMの米国における事情と今後の動きに焦点を当てる。Partner Relationship Managementの略称で呼ばれるPRMの概念は、CRM(Customer Relationship Management)のそれに近い。大きな違いは、CRMが良好な顧客関係の維持・促進を目的としているのに対して、PRMでは、小売業者や販売店など自社製品やサービスをエンドユーザへ提供するチャンネルパートナーとの関係強化に重点を置いている点だ。

 このPRMは、企業各社が自社の顧客だけでなく、様々なチャンネルパートナーとの強力な関係構築に必要性を見出したことに端を発し、2000年ごろから次第に姿を現すようになった。そして今日、J.D. Edwards、PeopleSoft、SAP、 Siebel等の大手ベンダでは、PRMコンポーネントを統合したCRM製品、あるいは完全なPRMソリューションを提供している。また、PRMに力を入れるベンチャー企業としてはChannelWaveやAllegis、Comergent、Click Commerce等が挙げられる。CRMの概念が広く浸透した米国では、PRMのみに特化したベンダに対して生き残りを疑問視する声も聞かれる。事実、これまでに多くのPRMベンダがSiebel SystemsやEpiphany等の巨大CRM企業とパートナー関係を構築してきた。例えば、IDCのアナリストMary Wardley氏は「PRMの機能性が更に充実し、メインストリームへと移行するにつれ、CRM企業が展開する製品の一部となる確立が高くなる」と予測する。

 PRMは、受注管理をはじめ引合いの共有、協業によるマーケティング、コラボレーション等を通じ、パートナー活動の統合やネットワークの強化・拡大を促進させるもので、CRMと同様に関係構築のほか、効率的な情報収集、時間および経費削減、収益増大を実現するソフトウエアである。年間当り20%の割合で成長を遂げ、今や$130億市場とされるCRM(Aberdeen Group)の認知度、浸透率には程遠いが、PRM市場も経済不況をよそ目に上昇傾向にある。事実、IDCの調査結果によると、2001年で$10億とされたPRM市場は、2003年までに$20億へ到達すると見込まれている。

 現在のところ、PRMに対する関心の大半は、製品販売をチャンネルパートナーに委ねるハイテク企業から寄せられている。Motorolaでの導入事例を見ると、企業および一般消費者に対する、自社の双方向ポケットベルの販売は、SkyTelやMetroCall等のポケットベル/携帯電話会社に依存している。しかし、実際にはMotorolaのブランド性があまりにも強いため、直接、同社から製品を求めるエンドカスタマーが後を絶たない。そこで、従来までは、チャンネルパートナーであるキャリア各社にこれらの商談を引渡し、顧客の需要に対応させていたが、その後のフォローについては、把握しにくい状況にあった。ChannelWave SoftwareよりPRMソリューションを導入後、Motorolaでは自社のウエブサイト上で問合せを収集し、顧客の提示した条件に見合う適切なキャリアへと割り当て、その後の経過を追跡できるようになった。PRMの役割は、商談の割り当てに留まらず、企業によっては、再販業者に対するトレーニングや製品に関する最新情報の紹介にも活用している。また、システムを通じた共有データに基づき、投資する価値のある販売チャンネルの予測と開拓にも使われる。このように、PRMの導入は、主に間接販売チャンネルを通じて製品展開を行うハイテク企業が牽引しているが、業界アナリストらの間では、今後、保険、医薬、商業銀行といった分野を中心に浸透するものと予測されている。

(c) 2002 KANABO Consulting


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