米(ベイ)エリアIT通信


拡大するWi-Fiネットワーク

2002年5月号

 今月のMarket Snapshotでは、Wi-Fiについて米国での事情と今後の動きに注目していく。この「Wi-Fi」(読み:ワイファイ)が指す意味は2つある。先ずは無線LANとして認知度の高いIEEE802.11bの別称であること。そして、WECA(以下で説明)が実施するIEEE802.11b規格の相互接続テストに合格した製品の商標としても使われている。この無線LAN製品間の相互接続能力の認定を目的とした国際規模の業界団体WECA(Wireless Ethernet Compatibility Alliance)は、1999年にLucent、3Com、Nokiaなどの企業数社が中心となって設立。IEEE802.11bに準拠する無線LAN規格「Wi-Fi」の設定を実現させ、2000年3月からその規格製品に関する認定作業に乗り出した。現在、約160社の参加企業を抱える同団体の発表(2002年5月)によると、認定作業の開始から24ヶ月の間で、75社の会員企業を対象とした認定製品は306点に達している。

 短距離での通信に適したBluetoothは、家電や携帯電話などへの応用が主流とされているのに対し、IEEE802.11bはPC向けのLANを無線化することに重点を置いている。正式的には「IEEE 802.11 High-Rate Direct Sequence」と呼ばれる規格で、2.4GHzを利用し、最高伝送距離を100m、最高伝送速度を11Mbpsとする高速かつ長距離での通信に対応するものだ。特に今年に入ってから、大都市の空港(SF、サンノゼ、ダラス等)やホテル、オフィスビル、コーヒーショップ(米国内スターバックス530店舗)、レストランなどを中心にT1電話回線もしくはDSL接続を介してインターネットに接続する「ホットスポット」(小型の無線局)の設置が盛んになってきた。また、携帯機器の利用者は、PCカードのミニ無線局を使って高速接続を楽しんでいる様子だ。

 米国全体で見た場合、InterTech Trends社では2002年末までに、Wi-Fiを通じて1500万台の各種機器がインターネット接続を行うと予測している。また、5月現在、米国各地に点在するおよそ1,000箇所のホットスポット(公共)は、今年の終盤にかけてその5倍に達するものとされている。このようにWi-Fi機器の浸透率が上昇している背景には、利便性はもとより価格の手頃さも考えられる。事実、トランスミッタの価格は最低150ドル程度で、携帯機器に必要なPCカードも100ドル程で入手できるため、その他の無線LAN装置に比較すると、やはりコスト面での魅力が大きい。さらに、WiFiサービスの普及に向け、ホテルや空港を対象に無料で設置を行う新興企業も出てきている。従って、着実な広がりを見せるWi-Fiは今後、他の無線サービスと競争を展開していくことになる。

 一方、Wi-Fiの市場機会としてホームネットワーキングへの関心も高まっている。Cahners In-Stat Group社のホームネットワーキング市場に関する最近の報告によると、(HN)装置の出荷台数が400万台強を記録した2000年の数値は1999年の2倍であったが、2001年にはさらにその2倍の800万台が出荷されるものと見込まれている。このようなホームネットワーキング市場の成長傾向は、一般消費者や企業内で「高速な無線接続の自由化」への需要が高まるにつれ、今後2年の間に802.11b規格製品へと拡大していくものである。これを裏付けるように、Cahners In-Stat Group社では、2005年における802.11対応のチップ市場は12億ドルの収益を計上するものと見ている。今後の進展に期待がかかるWi-Fi技術だが、セキュリティに関しては取り組むべき課題が残されている。にも拘らず、米国の企業や医療機関、大学機関の間でのWi-Fi導入例や利用率は減少していない。このことは、Wi-Fiが特長とする低コストで簡単な設置に対して大きな利点を見出すユーザの存在を示唆している。

(c) 2002 KANABO Consulting


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