米(ベイ)エリアIT通信


MPG-4規格によるデジタルの将来

2002年4月号

 今月のMarket Snapshotで取り上げるMPEG-4規格については、まず「MPEG」の背景から分りやすく説明しよう。Moving Picture Expert Groupの頭文字で呼ばれるMPEGは、当初ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)に属すマルチメディア符号化を推進する団体を指していたが、転じてマルチメディア産業における標準規格の名称としても広く使われるようになった。このMPEGとは蓄積メディア、通信、放送といったマルチメディアの符号化および圧縮技術に対する規格。動画および音声信号の符号化に加え、これらをどのような方法で統合していくかを規定したものである。例えば、インターネットに接続されたデスクトップや携帯電話に内蔵されたマイクロコンピュータでは、いずれも画像や音声をデジタルのデータとして読み込んでいる。ところが、機器の性質がそれぞれ異なるため、共通のデータ量をどのマシンでも利用することは難しい。そこで映像や画像などオブジェクト毎に最適なデジタル化を行う際、解像度やデータの格納方法、あるいはその規格がどの機械のデータ速度に適しているかについて、統一基準の必要性が出てきた。現在のところ、このMPEGは用途別に4フェーズから構成されている:

■ MPEG-1:ISO/IEC(International Electrotechnical Commission)が定めた、中級の質とビットレート(動画再生に必要なデータの伝送能力の通称)のビデオ・オーディオ圧縮に関する規格で、CD-ROMにビデオ映像を収めることに重点を置いている(ビデオなら50:1〜100:1の比率で圧縮)。ターゲットとするビットレートは1.5Mbpsである。

■ MPEG-2:同規格が適応される主なアプリケーションはDVD、地上波・BS・CS・ ケーブル放送など高画質・音質が決め手とされるため、MPEG-1に比べて1Mbps〜100Mbpsと高い数値が必要となる。

■ MPEG-4:MPEG-1およびMPEG-2と比較した場合、大きく異なる点はアプリケーションの性質である。目標とされるインターネットや移動体通信、マルチメディアなど転送速度の遅い回線で動画を発信する規格としてスタート。現在では64kbsp〜38.4Mbpsのビットレートに対応した符号化技術として標準化が進められている。

■ MPEG-7:上記3つのフェーズと同様、ビデオやオーディオなどのマルチメディア・コンテンツが対象だが、これらを有効に検索できるよう記述子の標準化を目指したもので、将来はホームサーバーの応用やEPGを前提として、現在開発が行われている。

 三番目のフェーズであるMPEG-4では、例えば携帯電話などの移動体通信機器用に、非常に小さなサイズ(最小80×60ピクセル)の画像処理ができる。これはMPEG-1/2で扱う映像サイズのわずか16分の1に相当する。さらに必要なデータを縮小するため、フレームの間隔を広げている。同規格では、秒間1フレームにまで引き下げることが可能で、これもMPEG-1/2の秒間30フレームとはかなりの差が見られる(秒間フレームの数と画質は比例関係にある)。この点からも、画像データに関しては、MPEG-4ではDVDやCD-ROMのように画質を追求するのではなく、オブジェクト毎に最適な符号技術を使用できるよう、全体としての圧縮率と画質を向上させている。これは言い換えると、マルチメディアのデータが回線状況などに影響を受けた場合でも「完璧」ではないにしろ、情報として認識できる範囲の画像を伝送させることでもある。

 また、同規格のビデオ圧縮方法については、基準となるフレームを事前に決定しておき、その前後のフレーム中で類似した部分や、今後予測される動作部分のデータを省略することで、最小限のデータ量で済ませるアプローチを採っている。さらにMPEG-1/2のモノメディアにCG、顔・胴体アニメーション符号化、MIDI、Text-To-Speech(TTS)といった合成画像・音声を、単一標準の中で同等に扱えることが挙げられる。例えば動的にシーン記述を変更させることで、AVオブジェクト毎の操作や加工も行える。音声データについても、限られたデータで人の声を記録するコーデックCELP(Code Exited Linear Prediction)や、パラメトリック符号化などを使うことができる。

(c) 2002 KANABO Consulting


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