科学と技術に渡る幅広い分野で頻繁に使われている「ナノテクノロジー」。日本では今後5年間でおよそ24兆円といった大規模な投資が予定されている。まず、ナノテクノロジーの土台となるのはわずか100万分の1mm、つまり原子レベルのサイズであり、これは生物の細胞や赤血球と同等の極小規模である。個別では果たしがたくても、これが集約されてDNAほどの大きさになれば様々な機能性を発揮する。極端な言い方をすれば、生物の体内で起きているDNAの二重螺旋構造をベースとした活動を技術に応用する、とも捉えることができる。この点に着目した材料科学者や有機化学者などの研究者によって開発が続けられ、今日の科学技術の発展に伴い注目を浴びようになった。ところが、ナノテクノロジーの歴史は予想以上に長く、アメリカの物理学者であるファインマン氏がこの技術の根本原理(トップダウン型:微小化への追究)を提唱したのを皮切りに、1980年代になってスタンフォード大学の客員教授であったドレックスラー氏がその現実性を著書「創造する機械」の中で説いている(ボトムアップ型:原子の複合による機能性の向上)。
この「ナノテクノロジー」を利用した分野は科学、材料生成技術、計測および測定、ナノ工学、ナノ生命科学、機械工学など幾多にも及ぶため、その可能性の高さにも世界中から関心が寄せられている。国際規模で見た場合、ナノテクノロジーの2001年における収益は総額で約4600億ドルに達している。米国では、2000年1月にクリントン前大統領が「国家ナノテクノロジー戦略」(National Nanotechnology Initiatives)とし、重要分野に挙げたことがいわゆるナノテクブームの先駆けとなった。ナノテクノロジーに投入する米連邦2001年度の会計予算は4億2200万ドルとし、前年比の56%増となっている。政府は然ることながら投資家たちからもその注目度は高く、2002年には最低でも10億ドルのVC投資が見込まれている。
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