| 2つの新しいOTTビデオサービス (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.191) |
2020年4月25日号
4月に2つの重要なOTTサービスが開始した。映画プロデューサーのジェフリー・カッツェンバーグが創立者で、メグ・ウィットマンがCEOと言うことで、大きな話題になっていた、Quibiが6日に始まった。QuibiはQuick Bites(軽食)から来ており、その名の通りにちょっと暇な時間に見る事が出来るような短尺のビデオを配信する。一編は10分以下であり、シリーズ物は平日に1本づつ配信される(ニュース等は週末を含めた毎日)。毎日、3時間以上のビデオが追加されていく。視聴デバイスはスマートフォンだけである。全コンテンツは(広告含め)Turnstyleと呼ばれている技術で制作されており、縦と横のバージョンがあり、持ち方を変えると即座に画面が切り替わる。料金は広告付きで$5、広告無しは$8である。
4月中に登録した人は90日間無料であるが、出だしは良くない。22日までのアプリのダウンロード数は270万と低めである。CEOのメグ・ホイットマンは「全く新しいサービスのローンチとしては大成功」と語っているが、Disney+が初日に1000万人の登録があったことと比べると見劣りする。また、視聴デバイスがスマートフォンに限られている事に対する不満が高く、急遽、コネクテッドTVへの対応が発表された。AirPlayとChromecastへの対応は5月中に行われる予定だが、Fire TV等のストリーミング・プレーヤへの対応はしばらく時間がかかるようだ。
2つ目のサービスはComcast/NBCUniversalのPeacockで、15日にComcastの加入者向けにプレビューとしてスタートした。Peacockには3つの料金がある。基本は広告付きで$5、広告無しが$10、そして、コンテンツ数が半分の無料版もある。スタートしたのは$5のバージョンで、ComcastのケーブルTVのSTBのX1、それに同社のブロードバンド加入者に無料で提供されているストリーミング・プレーヤのFlexの利用者に無料で配信されている。一般向けへの配信は7月15日に開始する。
Peacockはライブ(リニア)チャンネルとオンデマンドで構成されている。立ち上げると、すぐに「Trending」としてビデオが自動的に再生される。TrendingのビデオはNBCUniversalの様々な番組のショートクリップで構成されている。そこから選べるメニューのオプションは「Channels」と「Browse」である。Channelに行くと、NBC News Now、Sky News、Peacock Reality等、NBCUniversalの番組がベースのライブチャンネルが20程度ある。Browseはオンデマンドで、NBCの現シーズンのTV番組(放送翌日からの配信)、過去の番組のライブラリー、それにUniversal系の映画で構成されている。
どちらのサービスにも共通した問題がある。それはCOVID-19の影響でドラマ等のコンテンツ制作が中止になっている事である。Peacockのオリジナルコンテンツは正式ローンチの7月15日に配信開始予定であるが、その殆どは制作が終わっていない。オリジナルコンテンツが間に合わなくても、PeacockにはNBCUniversalの豊富なライブラリーがあり、大きな問題にはならない。しかし、Quibiには深刻な問題になるかも知れない。Quibiのコンテンツは10分以下の尺であり、またTurnstyleに対応する必要もあり、既存のコンテンツをライセンスし、そのまま配信することは出来ない。現時点では十分なコンテンツがあり、問題は無いが、制作中断がこのまま続くと、コンテンツが無くなってしまう恐れがある。
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