| ViacomCBSのOTT戦略は? (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.187) |
2019年12月20日号
8月のレポート(「CBSとViacomが再合併」)で書いたViacomとCBSの合併が完了し、ViacomCBSが誕生した。CEOにはViacomのCEOであったボブ・ベイキッシュ が就任した。ViacomCBSはNickelodeon、MTV、Comedy Central、BET等の多チャンネル向けネットワーク、地上波のCBSとThe CW(AT&TとのJV)、15の地上波放送局、有料チャンネルのShowtime、それに映画スタジオのParamountを持ち、視聴率では最大のTVネットワークになる。
しかし、ビデオコンテンツの視聴は多チャンネルを含めた放送から、OTTに移行しており、TVの視聴率より、OTT戦略が重要になる。ViacomとCBSのこれまでのOTT戦略はどのようなもので、シナジーはあるのか?
CBSは視聴者への直接配信(Direct to Consumer: D2C)では積極的で、2014年10月にSVODのCBS All Accessをスタートしている。CBS All AccessはCBSの過去のライブラリー、現シーズンのキャッチアップだけでなく、ほぼ全米で同時配信も行っている。地上波ネットワークで、自社で同時配信をサブスクリプションとして行っているのはCBSだけである。CBS All Accessは500万程度の加入者を持ち、有料チャンネルのShowtimeもSVODで提供している。
さらに、CBSは広告収入ベースのOTT専門のニュースチャンネルのCBSNも2014年に開始し、その後、スポーツニュースのCBS Sports HQ、エンターテイメント・ニュースのET Liveと広げ、さらにOTTでのローカルニュースもサンフランシスコ、ボストン、ニューヨーク、ロスアンゼルス、ミネソタで立ち上げている。CBSは多チャンネル向けネットワークを持っていなかったことで、多チャンネルサービス事業者に遠慮する事無く、D2C化が出来た。
Viacomはその逆で、TVネットワークはすべて多チャンネル向けである。OTT化をすれば、多チャンネルサービスへの加入者が減り、CBSのようにSVODを始めることはカニバライゼーションにつながる。ViacomはOTT化を避けてきたが、2019年始めにPluto TVを買収した。Pluto TVは広告収入のOTTサービスで、オンデマンドでは無く、番組編成されたチャンネルを配信している。Viacomは多チャンネルで放送しているコンテンツはPluto TVでは配信しないが、過去の番組、あるいは再利用した番組でチャンネルを作り、多チャンネル事業者との競合を避けた。
D2Cには非常に積極的なCBS、及び腰のViacomとではシナジーが無い様だが、そうでは無い。Disney+がスタートしただけでなく、多チャンネルサービスを持つComcast、それにAT&Tコンテンツ部門も2020年春にはD2Cサービスを開始する。ネットワークが多チャンネルサービス事業者に遠慮することは無用になっている。それと同時に、OTTでのが主流になった時点で、番組を見る時の「入り口」がどうなるか問題になり始めている。これまでは、放送チャンネルから見始め、何も無ければNetflix等を利用した。OTT化後はどうであろう。最初から見るものが決まっていない時は、チャンネルをザッピングし、そこで得たきっかけでオンデマンドを検索する事は変わらないかも知れないう。その場合、Pluto TV、XUMO、STIRR等のようなサービスが入口として、放送をリプレースすることになる。
Pluto TVのアクテイブ・ユーザはViacomの買収後から急速に増え、2000万人を超えている。Pluto TVにCBSのライブラリーが加われば、利用者はさらに増える。これを入り口として使い、CBS All Accessで得たノウハウを使ったをViacomCBSのSVODに導くことが出来ると、ViacomCBSがD2Cで大成功する可能性もある。
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