| 減っている放送広告、増えるAVODサービス (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.185) |
2019年10月24日号
eMarketer社は2019年のTV広告市場規模は$703億で、昨年から2.9%減ると予想している。昨年のスーパーボウルの広告売上も前年から5%の減少があったと、Kanter Mediaは報告している。TV放送の視聴時間が減っており、多チャンネルサービス加入の脱退も増えているので、当然のことである。特に若い層が放送(放送波と多チャンネル)を見なくなっており、ティーンエージャーのTV視聴時間は2014年比で、50%も減っている。
これに対して増えているのはデジタル(インターネット)広告である。Internet Advertising Bureau(IAB)によると、インターネット広告は今年の前半期で$579億に達しており、2019年度は$1200億を超える。しかし、バナー、検索等のこれまでのインターネット広告でTV広告をリプレースすることは出来ない。インターネットでのビデオ広告ではYouTube等があるが、プレミアム・ブランドの広告主がユーザ投稿のビデオに広告する事はリスクがある。プレミアム・ブランドが広告するには、コンテンツもプレミアムでなければならないが、TV放送をリプレースしているNetflixには広告が無い。
広告収入のVODサービス(AVOD)は以前からあるが、成功をしていなかった。OTTビデオを見る人の殆どはTV放送も見ており、AVODを使う必要はなかった。HuluはAVODでスタートしたが、広告付きSVODに転換した。しかし、放送を見る人が激減することで、AVODが求められ始めている。これにより、Huluへの広告が増え、今年の1月に広告付きサービスの価格を$8から$6に値下げしている(広告無しは$12で変更なし)。Huluによると、その加入者の53%はTV放送を全く見ていない。
Rokuもこの需要で成功している。ストリーミング・プレーヤではトップシェアだが、ハードウェアの販売(ライセンス)では収入は限られていたが、最近に売上が大きく増えている。Q2のRokuの売上は$2.5億で、前年同期から59%の成長があった。この成長を支えているのは広告であり、Roku利用者向けのAVODのRoku Channelからの収入が急成長している。広告を含めたプラットフォームから売上は昨年のQ2では57%であったのが、67%になっている。
AmazonもIMDb TVと言うAVODを始めており、YouTubeも劇場映画等のプレミアム・コンテンツを増やしている。ViacomはPluto TVを今年の初めに$3.4億で買収し、その利用者は買収時の1200万人から1600万人に増えている。AVODのコンテンツは過去のTV番組、あるいは映画であったが、広告収入が増えれば、コンテンツも新しくなり、新たな利用者も増える。より新しいコンテンツだけでなく、WalmartはVudu Movies on Usでオリジナル・コンテンツの配信を始めている。
このAVODの成功はSVODにインパクトを与える。特に、これからスタートするDisney+、Apple TV+、HBO Max(Comcast/Walmart)、Peacock(Comcast/NBCUniversal)にとっては大きい。新たに使うサービスとして、無料のRoku Channel、IMDb TV等で満足する人が多いと、新たなSVODサービスの成功は難しくなる。
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