| CBSとViacomが再合併 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.183) |
2019年8月23日号
CBSとViacomの合併が決まった。CBSは地上波ネットワークのCBS等を持ち、ViacomはNickelodeon、MTVの等の多チャンネルネットワーク、それに映画スタジオのParamountを持つ。この2つの会社は元は一緒であった。Viacomは1952年にCBSのコンテンツ制作部門としてスタートしたが、1971年にネットワークによるコンテンツ部門の保有が禁止されたことで、Viacomとしてスピンオフされた。この規制が無くなったことで、2000年にCBSとViacomは合併し、Viacom社になる。しかし、CBSとViacomの経営陣は対立し、株価も転落し、関係は長く続かない。
Viacomの親会社、National Amusement Inc.(NAI)は2005年にCBSとViacomを分離する。Viacomは当時は成長していたケーブルTV向けネットワークと映画スタジオを得、CBSは足かせになっていた「成長性のない」事業を押し付けられる。それは、地上波ネットワークのCBSとThe CW(WarnerMediaとのJV)、地上波局、CBSラジオ、屋外広告のCBS Outdoor、出版会社のSimon & Schuster、アミューズメント・パークのParamount Parksで、多チャンネルサービス向けネットワークのおすそ分けとして有料チャンネルのShowtimeとCBS College Sports(今のCBS Sports)を得る。
2016年にNAIはViacomとCBSの再合併を試みるが、両者経営陣の対立は根強く、成功しない。2018年にはCBSがViacom買収を試みる。この時点では両者の立場は逆転している。CBSはCBS Radio、Simon & Schuster、Paramount Parks等を売却し、スリムになり成功したのに対して、Viacomはコード・カッティングの影響で成長が鈍っていた。しかし、NAIはViacom主体の合併を望み、CBSとの争いとなり、また破談する。
今回、話がまとまったのは、分離当時の対立していたエグゼクティブ達がいなくなったためである。特に大きな影響があったのはCBSの元CEOのムーンベスである。彼は、重荷とともに放り出されたことでNAIを恨み続けており、合併するならCBS主体で、Viacomエグゼクティブは不要と考えていた。しかし、彼は昨年にセクシャルハラスメントの容疑で辞任し、3回目の再合併の話がスタートした。CBSとViacomは合併し、ViacomCBSとなり、その社長とCEOには現ViacomのCEOが就任する。
CBSとViacomの合併が急ピッチで進んだのにはムーンベスが消えた以外にもう1つの理由がある。それはTVネットワークのOTT化である。DisneyはHuluを持ち、ESPN+をすでにスタートさせ、11月にはDisney+を始める。AT&TのWarnerMedia、ComcastのNBCUniversalも2020年にはOTTサービスを開始する。CBSはCBS All Accessを持ち、Viacomは最近にPluto TVを買収してOTTに参入している。
しかし、Netflix、Amazonの既存大手、それにコンテンツ大手のDisney、AT&T、Comcastに対抗するにはCBSもViacomもライブラリーが少なく、さらに大きな問題は内容が偏っていることである。CBSのコンテンツは一般的過ぎ、Viacomは狭すぎる。元は同じ会社であったので当然であるが、一緒になることでバラエティがあるコンテンツを持つことが出来る。保有コンテンツは140万エピソードのTV番組と3,600タイトル以上映画となり、Disney、Comcast、AT&Tに続く4番目のコンテンツ事業者となる。
ViacomCBSの登場には別のインパクトもある。通信事業者のComcastとAT&Tはコンテンツを持ち、インターネット系ではNetflixとAmazonがコンテンツでも力を持っている。これからコンテンツに力を入れる可能性のある会社のVerizon、T-Mobile、Apple等に取り、ViacomCBSは最適な標的になる。
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