| 2019年はNetflixへの挑戦の年 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.175) |
2018年12月20日号
2019年にはNetflixへの2つの大きな挑戦者が登場する。1つはDisneyである。Disneyは2019年第4四半期にSVODサービスのDisney+をスタートさせる。Disney+はDisney、Pixar、Star Wars、Marvel、それにFoxから得るNational Geographicのコンテンツが主体となり、Disneyのブランドイメージである家族的なコンテンツがベースになる。すでにStar WarsとMarvelシリーズからのオリジナル番組の制作も決まっている。
DisneyはFoxから映画スタジオの20th Century Fox、多チャンネルサービス向けネットワークのFX等も得るが、National Geographic以外はDisney+には含まれない。それ以外のコンテンツ配信にはHuluを使う予定である。Foxから買収する資産にはHuluの30%が含まれており、現在の30%と合わせ、DisneyはHuluの60%を持つ事になる。残りは、Comcast(30%)とAT&T(AT&T)が持っている。AT&TはHuluの10%をDisneyに売ることを検討しており、ComcastもHuluを手放す可能性が高く、2019年中にはDisneyはHuluの100%を持つ事になるであろう。DisneyはDisney+とHuluに加え、スポーツ専門のOTTビデオサービスのESPN+も持ち、3のサービスでNetflixを攻める。ESPN+は2018年4月にスタートし、100万人以上の加入者を持っている。
WarnerMediaを持つAT&Tも2019年第4四半期にNetflixに挑戦する。AT&TのOTTビデオサービスは3つのティアを持つ。ベーシックなティアは劇場映画が主になり、次のティアにはそれにヒット映画とオリジナルコンテンツが加わる。トップのティアにはHBOを含めたWarner Mediaの他のコンテンツ、それに他社からライセンスするコンテンツが含まれる。
Netflixへの挑戦者が登場するのは2019年の第4四半期になるが、すでにNetflixへの影響は出ている。DisneyはNetflixと独占配信契約をしていたが、ライセンシング契約の更新はストップしており、NetflixからDisneyのコンテンツはほとんど消えている。「Daredevil」等のMarvelシリーズはNetflixが制作費を払っているので、無くなりはしないが、新たな制作は終了になる。WarnerMediaもOTTサービス事業者とのライセンシング契約は更新しないことを発表している。
Netflixはこれを予期していた。オリジナル制作はコストがかかり、リスクも高いが、2014年からオリジナルコンテンツ制作に大きな投資をして来た。コンテンツのライセンシングが消えれば、Netflixは生存出来ない。Netflixのオリジナルコンテンツ化は成功している。調査会社のParrot AnalyticsとKaganの共同調査では2019年中にはNetflixのオリジナルコンテンツ依存度は50%を超える事になる。
2社の調査では今年の7月までの1年間でNetflixオリジナルコンテンツの視聴は月間1%の率で増えている。これに対して、ライセンスしたコンテンツの視聴は1年間で10.9%の減少があった。このトレンドが継続すると2019年10月にはNetflixのオリジナルコンテンツ依存度は50%を超える。タイミング的にはDisney、WarnerMediaによる挑戦が始まる時期と完全に一致しており、Netflixの予期とその対応は正しかった事になる。しかし、DisneyとAT&Tの2つの敵と同時に戦う事は簡単では無いであろう。
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