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DRI テレコムウォッチャー  from USA


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      NSI Research社の デジタル放送とブロードバンドTVの情報サービス      
  年間情報サービス「The Compass」 と 「The Compass」年鑑レポート
 放送/メディア会社、通信事業者・機器ベンダを対象としています。


なぜ、AT&T、ComcastはSTBを開発するのか
 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.174)
2018年11月21日号

 ブロードバンドを使った多チャンネルサービスのメリットの1つに専用のSTBが不要と言う事がある。これまでの多チャンネルサービスとは違い、事業者がSTBを提供する必要性がなく、加入者はスマートフォン、タブレット、スマートTV、ストリーミング・プレーヤ等、使いたいデバイスを使える。事業者の手間が減り、加入者には自由度が増す。

 Win-winの様だが、AT&Tは独自のストリーミング・プレーヤをDirecTV Nowの加入者を対象にテスト中であり、Comcastもストリーミング・プレーヤを開発している。流れに逆行しているようであるが、何が背景にあるのか?

 AT&TはOTTベースのDirecTV Nowを提供している。これは衛星放送のDirecTVより安く、チャンネル数も少なく、インタフェースも違うので、既存サービスのリプレースメントではない。AT&TはDirecTVと同等なサービスもブロードバンド環境で提供する予定である。DirecTVと同等のユーザ体験を提供するためには、ある程度のハードウェア性能が必要となり、どのストリーミング・プレーヤでもOKには出来ない。

 AT&Tがテスト中のストリーミング・プレーヤはAndroid TVベースであり、Netflix等のアプリを使うことが出来る。しかし、通常のSTBと同じにスタート画面はDirecTV Nowで配信されている放送番組である。DirecTV Now加入者にこのAT&T製のストリーミング・プレーヤを普及させる事ができれば、利用者が真っ先に見るのはDirecTV Nowであり、加入者を引き留める効果がある。

 Comcastの目的は異なっている。Comcastは自社のブロードバンド回線を使ったXfinity Instant TVと呼ばれる多チャンネルサービスを提供しているが、開発中のストリーミング・プレーヤはその利用者だけでなく、Comcastのブロードバンド加入者全体を対象に提供する予定である。

 ComcastはケーブルTVではX1と言うSTBを使い、スマートホームの管理、コンサートチケット購入等、様々な追加サービスを利用可能にしている。これらサービスは新たな収入源になっている。Comcastのホームセキュリティー・サービスへの加入世帯数は128万世帯に増えている。

 問題はケーブルTV加入者が減っているのでこれらサービス対象者も減っている事である。Comcastは専用のルーターを使い、同社のブロードバンドだけのユーザでもスマートホームのサービスを利用可能にしているが、その場合のUIはスマートフォンになる。専用のストリーミング・プレーヤがあれば、X1と同様にTVの画面からもサービスが利用可能になる。

 Comcastのストリーミング・サービスはAndroid TVではなく、X1をベースにしている。X1向けのNetflix、YouTubeアプリ等が使え、X1をポピュラーにしている音声検索も利用可能である。ケーブルTV加入者が減っても、ComcastのブロードバンドとX1ベースのストリーミング・プレーヤを使ってもらえれば、X1が可能にしている新たなサービスを普及させて行くことが出来る。

 多チャンネルサービス事業者にとってSTBはサービスの差別化に大切であった。配信媒体がケーブル、あるいは衛星からブロードバンドになっても、これは変わらない。ストリーミング・プレーヤにAmazon、Roku等を使われていたのでは、差別化は出来ない。


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