| Amazonのテレビ戦略 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.172) |
2018年9月22日号
AmazonはFire TVで地上波を視聴、録画することを可能にする製品を発表した。このRecastと言う製品は地上波を受信し、トランスコードし、WiFiで映像を配信するので、Fire TVに接続する必要はない。テレビも近くでなく、家の中で受信状況が最もいい場所に設置することが出来る。Recast設置するとFire TVが認識し、インタフェースに「DVR」「On Now」、それに番組表が自動的に加わる。Recastは2チューナ、500 MB版が$230、4チューナ、1TB版が$280で、ストーレッジ容量はUSBで追加することが出来る。利用料は無い。Recastされたテレビ番組はFire TV以外にEcho Show、Echo Spot、それにiOSとAndroidのアプリで見ることが出来る。モバイルアプリであれば、外出先からもアクセス出来る。
同じ様な製品にはDishのAirTV、Tablo等があるが、Recastの大きなアドバンテージはFire TVのUIに統合されていることだ。DishのAirTVはSling TV地上波を加えるためで、Sling TVと統合しているが、Sling TVを使っていなければ、価値は低い。Tableは独自のアプリが必要になる。
Fire TVとRecast、それにPrime Videoがあれば、多チャンネルサービスに加入する事なく地上波の視聴、録画、それにオンデマンドのコンテンツにアクセスすることが可能になる。HBO、Showtime等のプレミアムチャンネルが加えたければ、Prime Video Channelから加入することが出来る。大きなポイントはすべてがFire TVのUI内で利用可能であり、別のアプリを立ち上げる必要が無い事だ。
Recastのサービス料は無料だが、Prime VideoはSVODであり、利用料金無料のソリューションではない。しかし、AmazonはFire TV向けの広告ベースの無料のVOD(AVOD)の提供を予定していとの噂がある。AmazonのAVODの噂は昨年も流れ、その時は否定をした。ストリーミング・プレーヤではトップシェアで、Amazonと競合するRokuはRoku Channelと呼ばれるAVODで成功しており、今回は真実性がある。
このAVODサービスが出来れば、Fire TVを買えば無料でVODが利用可能になる。これにRecastを加えれば、地上波の録画視聴が可能になる。Amazonには映画等の有料コンテンツもあり、さらにPrime Video、それにPrime ChannelのSVODに加入可能であり、すべてがAmazonのUI内で出来る。多チャンネル・サービスのリプレースとしてはスポーツのコンテンツが弱いが、AmazonはAmazon Sportを立ち上げ、ESPNからエグゼクティブを引き抜き、強化をしている。
Sling TV、DirecTV Now、Hulu with Live TV等のOTTベースでの多チャンネルサービスが登場しているが、ビジネスモデルは既存の物と同じである。Amazonのアプローチはこれまでとは全く異なったものであり、放送に与えるインパクトも大きいであろう。
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