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加速するスポーツのSVOD化 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.167)
2018年4月25日号

 アメリカではスポーツ放送権は大手のTVネットワークが持ち、多チャンネルサービスで放送されてきた。スポーツチャンネルとしてはDisneyのESPNが最大で、DisneyはESPN以外にもESPN 2、ESPNU等複数のスポーツチャンネルを持っている。これに対抗し、FoxはFSN、NBCはNBC Sports、CBSはCBS Sportを持っている。その他、地元チームの試合を専門にする地域スポーツチャンネルもある。OTTでの配信は多チャンネルサービス加入者を奪う可能性があることから、積極的には行われていなかった。

 しかし、状況は急速に変わっている。NBC Sportsは、NBC Sports Goldとして昨年からモトクロス、自転車、陸上、プレミアリーグ等の個別の有料シーズンパスを始めた。そして、今月にはESPNが月額$5のESPN+を開始し、Turner(Time Warner)はBleacher Report Live(B/R Live)と呼ばれるサービスを開始した。B/R Liveはサービスを開始しているが、テスト期間であり、正式な開始は6月の予定で、価格は発表されていない。これらのOTTサービスで配信される試合はテレビでは放送されないものであり、スポーツ専門チャンネルをリプレースする物ではないが、急速にスポーツのOTT化が始まっている。

 この背景には多チャンネルサービスの加入者減少がある。ケーブルTV、衛星放送、IPTVは2017年に合計で350万世帯を失った。OTTベースの多チャンネルサービスが250万世帯増えたことで全体的な減少は100万世帯である。だが、OTT多チャンネルサービスにはスポーツチャンネルが含まれない物もあり、含まれていてもその数は既存の多チャンネル放送より少ない。OTT多チャンネルサービスが増えても、既存の多チャンネルサービスサービスからの加入者が減ると、スポーツチャンネルの収入は減る事になる。

 このインパクトが最も大きいのはDisneyとTurnerである。DisneyのESPNは最も高価な基本チャンネルであり、その契約料は1加入者あたり月$8である。多チャンネルサービス加入者が100万世帯減るとDisneyは1年で$960万ドルを失う訳である。TurnerのTNTは総合チャンネルであるが、契約料金は$2で、ABC等の4大地上波ネットワークの再送信料の2倍である。TNTが地上波よりも高価な料金設定が出来るのはNBA等の試合を多く放送し、スポーツに力を入れているからである。スポーツチャンネルは、多チャンネルサービス加入者の減少から起きる減収をSVODで補う必要がある。

 多チャンネルサービス加入者の減少のインパクトはスポーツリーグにも及んでいる。スポーツチャンネルが多チャンネルサービスの基本チャンネルであった事で、試合を見る機会が多くあり、ファンが増えてきた。しかし、放送視聴者が減ると新規ファンを獲得する事が難しくなる。特に、35歳以下で放送離れが進み、若い世代のファンを獲得する機会が減ることは大きな問題である。ファン獲得の為にはOTT配信をする必要があり、スポーツリーグもOTTでの配信に熱心になっている。昨年、NFLは木曜の試合をAmazon Primeで配信し、MLBは今シーズン、FacebookとTwitterで50試合を無料で配信している。


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