| SVODが与えるテレビ広告市場への影響 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.166) |
2018年3月22日号
Netflix等のSVODサービスを見る時間が増え、テレビ放送の視聴時間が減れば、当然テレビ広告を見る時間が減る。Nielsenの統計ではOTTビデオの月間視聴時間は53時間であった。1日で1時間46分のOTTビデオ視聴である。テレビでは平均で1時間に14分の広告があるので、1日に25分のテレビ広告を見なかった事になる。30秒広告として、50本分である。テレビ広告料は平均で30秒で1人あたり1セントなので、1日で50セント、年間では$182分のテレビ広告を見なかった事になる。
しかし、OTTビデオは様々なデバイスで視聴可能であり、テレビ視聴を奪っていない部分もある。それを20%とすると、テレビ広告から奪った規模は$145になる。さらに、OTT視聴が奪ったテレビ視聴には広告の無いHBO等の有料チャンネルの視聴、それに広告をスキップするタイムシフト視聴も含まれている。それらを20%とすると$116になる。また、OTTビデオでもHuluの様に広告付きもある。広告付きOTTビデオの率を50%とすると、テレビ広告はSVODにより、1人あたりで$58を失った事になる。これにOTTビデオ利用者数の1.8億人を掛けると$104億となる。テレビ広告の市場は$720億であるので、SVODはテレビ広告の約15%を奪っている事になる。
SVODの視聴が増えれば、テレビ広告の視聴時間はさらに減る。これに対応するためにテレビネットワークは広告枠を増やしてきた。Pivotal Research社によると、広告時間は3年前から4%増えている。しかし、広告が増えることで視聴者の不満が増え、逆に放送離れを増加させ、SVODの視聴を加速化させる事になっている。
テレビネットワークもこのジレンマに気づき、広告を減らして視聴者の満足度(集中度)を増やす事で、広告単価を上げる方向に動き始めた。NBCUniversalは2018年秋からの新シーズンで広告時間をプライムタイムで10%、全体では20%減らす事を発表した。広告枠を減らす分、その価値を増すための幾つかの方法を発表している。その1つは、番組と広告の内容をマッチさせる事で、例えば、広告ブレーク前がコーヒーショップの場面であれば、広告はコーヒー関連の宣伝にする。NBCUniversalはベストフィットの広告はAIで決める。さらに、番組の最初と最後の広告枠はそれぞれ30秒広告で2本とし、広告価値を増す。
Foxも広告減少を予定しており、目標は2020年には広告を1時間に2分に減らす事だと発表している。同社は、すでに多チャンネルサービスのオンデマンド配信では広告を75%減らしている。広告を減らす事の効果は実証済みであり、1時間に2分の広告枠でも収入は減らさない為の新たな広告手法を2020年までに提供すると話している。
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