DisneyのFox買収がHuluへ与える影響　(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.163)

　Disneyが21st Century Foxの売上規模で約80%の資産を$534億（債務を含むと$661億）で買収する。Disneyの買い物は、映画スタジオの20th Century Fox、多チャンネルサービス向けネットワークのFX、FXX、National Geographic、地域のスポーツネットワーク、それに海外事業のSky等である。地上波ネットワークのFox、Fox保有の地上波局、ニュースネットワークのFox News ChannelとFox Business Network、それにスポーツネットワークのFS1、FS2、Big Ten Networkは含まれない。これは、買収前に別会社としてスピンオフされる。

　Fox買収はDisneyが開始予定のSVODサービスのコンテンツ強化が目的である。Foxの20以上の地域スポーツネットワークは2018年に開始予定のESPNのSVODサービスに必要なスポーツコンテンツを与える。Foxの映画、それにFXのテレビ番組は2019年開始のDisneyブランドのSVODの大きな資産となる。Disneyの映画とTV番組だけでも十分に魅力的だが、それにFoxの映画とFXのTV番組を加えることで、Netflixと十分に競合出来るサービスになる。

　Disneyはさらに、Foxが持つHuluの30%も得て、Huluの60%を持つことにもなる。DisneyのABCネットワークのテレビ番組は引き続きHuluでの配信される。また、家庭的なDisneyのイメージにそぐわないFXの番組もHuluでの配信になるであろう。DisneyはESPN、Disney、それにHuluの3つのSVODサービスを運営する会社になる。

　Huluは「Handmaid’s Tale」等のオリジナル番組が成功し、好調である。しかし、不安定な材料も大きい。HuluはDisney、NBCUniversal、それにFoxと言う、コンテンツ分野で競合する3社のジョイントベンチャーである。三つ巴の戦いが起きなかったのは、地上波ネットワークの番組配信と言う共通目的があったからである。しかし、ComcastのNBCUniversal買収からこの微妙な3方向でのバランスは崩れ始めた。

　ComcastはNBCUniversal買収によりHuluの30%を持っているが、買収時の条件の1つとして、Huluの経営には口出しをしない事になっている。しかし、これら条件は2018年9月で失効する。HuluはComcastのケーブルTVと競合するOTT多チャンネルサービスを始めている。これまで口を封じられていただけに、Huluの方向性には強い意見があろう。さらに、Huluの10%を持っているTime WarnerはAT&Tが買おうとしている。AT&TはDirecTVの買収により、多チャンネルサービス事業者としては1位になっている。さらに、AT&TはHulu with Live TV と真っ向から競争するDirecTV Nowも持っている。

　Huluは地上波ネットワーク3社の共同で始まったが、その後の買収により、オーナーは最大手のケーブルTV事業者、最大の電話会社、それに、Netflixの最大の競合になろうとしている会社になる。これら3社がHuluに対する共通目的を見つけ、調和のあるパートナーになる可能性は低い。

　DisneyがHuluの運営に関してComcastとAT&Tの合意を得ることは容易では無いであろう。しかし、Disneyは自社のSVODサービスを立ち上げ、Netflixとの戦いを始めた最中にHuluで内戦が起きることは避けたい。もし、争いによりComcastとAT&Tが共に脱退する事になった場合、HuluはNBCUniversalとTime Warnerのコンテンツを失う。DisneyがFoxを買収する時点で、地上波ネットワークのFoxはHuluとは無関係となり、コンテンツを提供しなくなる可能性があるり、最悪の場合、HuluはABC以外のコンテンツの殆どを失ってしまう。Huluだけでなく、DisneyのSVOD戦略に大きなダメージを与える事になる。