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ATSC 3.0次世代放送規格として決まる (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.162)
2017年11月20日号

 11月16日のFCC委員会で、次世代放送の規格となるATSC 3.0が承認された。これにより、放送局はATSC 3.0での放送開始に向けて本格的に動く事が可能になり、早ければ2018年には一部の局が放送を開始する。

 ATSC 3.0の大きな特徴は、1)高度な映像(4K/HDR)と音声(3D立体音響)、2)配信がTSからIP(UTP)に替わる事で、インターネットとの融合が容易になる、3)モバイル対応、4)マルチチャネル対応、5、リアルタイムでの視聴動向の測定を使った高度な広告配信等がある。

 ATSC 3.0は大きな魅力を持っているが、導入にはいくつかの大きな課題がある。最大の問題はATSC 3.0は現在の方式(ATSC 1.0)とは互換性が無いので、既存のテレビでは視聴不可能なことである。アナログからデジタルへの移行時の様にATSC 3.0への移行は義務では無く、任意であり、移行時に新たなチャンネルは提供されない。ATSC 3.0へ移行した局の放送は既存のテレビでは視聴出来なくなるので、放送局は同じ地域の他局と契約し、チャンネルを共有させてもらい、ATSC 1.0での放送を平行に行う必要がある。

 また、任意なのでテレビ、あるいは、スマートフォンへのATSC 3.0チューナ搭載の義務もない。しかし、放送局はATSC 3.0移行が任意であることには賛成をし、義務化を求めてはいない。これは、放送局が素早く、自由に移行が出来る事を求めているためである。義務化となった場合、その方法、予算等を決める法律が必要となり、デジタル移行時の様に長い時間をかけてのプロセスとなる。

 しかし、放送事業者にはその様な時間の余裕はない。放送市場はOTTビデオに奪われている。30年代以下はテレビを視聴するのに放送波、あるいは多チャネルサービスを使うのではなく、インターネットを媒体にし始めている。ATSC 3.0への移行が開始する前に法律作りに数年かかったのでは、開始する前に市場はすべてOTTになってしまう可能性もある。

 放送局はOTTの進出を食い止める必要がある。ATSC 3.0はIPベースであり、スマートフォン等のIPデバイスとの親和性は高く、さらにインターネットとのハイブリッド化も簡単であり、インタラクティブなコンテンツの提供、マルチチャンネル化、ターゲット広告等、新しいサービスと収入モデルを導入する事が出来る。

 しかし、ATSC 3.0に強い関心を示しているのは放送局であり、そのコンテンツを制作しているネットワークは特にATSC 3.0に力を入れている訳ではない。ABC、CBS、Fox、NBCにとっては自分のコンテンツが売れれば良いのであり、放送波にこだわる必要はない。すでにCBSは同時配信を含めたOTTサービスのAll Accessを開始しており、DisneyのESPNとDisneyのコンテンツをOTTで配信するサービスを開始する予定である。ATSC 3.0が4K対応であっても、ネットワークは4Kコンテンツで儲ける方法として地上波ではなく、SVODを選ぶ可能性もある。いくらATSC 3.0の技術が魅力的であっても、コンテンツ無しでは普及は難しい。ATSC 3.0に移行する局は4Kでは無く、最初はモバイル放送に力を入れていく。

 地上波局としてはSinclairが最もATSC 3.0には熱心であり、全局をATSC 3.0に移行する事を発表している。同社は地上波局のNexstar、Univision等とコンソーシアムを設立し、さらにTribuneの買収を狙っている。Tribune買収でSinclairにリーチは72%に増え、これにNexstar、Univision等のコンソーシアムメンバーを加える事で、100%のカバーを出来るようになる。だが、SinclairはATSC 3.0の技術への投資もあり、ATSC 3.0が普及すればパテント料も入る。1つの会社がASTC 3.0で膨大な力を持つようになる可能性もあり、この買収に反対の声も高い。


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