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劇場での映画の見放題サービス (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.160)
2017年9月25日号

 Netflix等のSVODサービスにより、インターネットでは映画の見放題サービスは当たり前になっている。しかし、インターネット上だけでなく、実際の映画館で映画が見放題になるMoviePassと言うサービスが存在する。これまでは月額$30の値段であったが、オーナーが変わり、月額$9.95とNetflix並の料金に値下げしたことで、大きな話題になっている。

 テレビの大型化、高品位化、そして見放題のSVODサービスの普及により、観客動員数は減少している。アメリカとカナダの合計映画観客動員数は2007年では14億人であったのが13.2億人に減っている。見放題サービスにより観客は増えるはずであるが、$30ではコスト・パフォーマンスは低い。映画のチケット料金は平均で$8.65であり、$30では月に4回見ないと元が取れなく、MoviePassは成功しなかった。

 オーナーが変わったMoviePassは、元NetflixエグゼクティブのMitch LoweをCEOに雇い、さらに価格を$9.95に引き下げた。月に映画に2回行けば十分に元が取れる値段であり、MoviePassの加入者は急増している。値下げの発表から1ヶ月で加入者は40万人になっている。MoviePassは12ヶ月間で250万人がサービスに加入し、チャーンを考慮しても来年には210万人以上の加入者になると発表している。

 映画館もMoviePassにより観客が増えていると報告しており、サービスは成功しているように見える。だが、アメリカで最大の映画館チェーンのAMC TheatersがMoviePassとの契約を破棄する等、サービスに対する不安要因も多い。その最大の問題はビジネスモデルが不明瞭な事である。MoviePassが劇場に支払うチケット料金は定価よりは安いが、Fandango等のチケット販売業者の値段と同様と思われる。それ以上の値引きがあったとしても、$9.95では加入者が月に映画に3回以上行くとMoviePassが収益を上げる事は不可能であろう。

 同サービスの新しいオーナーのHelios and Mathesonはデータ分析会社であり、加入者のデータを売って儲けるとの噂もあるが、それでも十分な収入になるとは思えない。この料金は一時的な物で、価格を$30に戻す事を予定しているのかも知れないが、それでは値上げ時にかなりの加入者を失う事になる。また、劇場側もMoviePass加入者に割引し続けてもメリットは少ない。観客数は増え、ポップコーンの売上は増えても、チケット収入は増えない。MoviePassには3DとImaxは含まれていないので、MoviePass加入者が3D、あるいはImaxを見る時は正規の収入を得られるが、それだけの為に値引きをし続けるメリットは無い。

 AMC TheatersがMoviePassとの契約を破棄したのもこのサービスが持続出来るのかが不明だからだ。AMCはこれは値下げと同じ事であり、一時的に値下げをすれば観客は増えるが、値段を戻した時点で不満を買い、しばらくは観客が減るので、長期的に観客を増やす効果は無いと語っている。このビジネスモデルではMoviePassのサービスを続ける事は不可能であり、サービスが続かなくなった時点で映画に失望する観客を長期的に失うデメリットの方が遥かに大きく、これは映画業界のリスクになるサービスだと批判している。


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