| 放送周波数帯域の競売が完了 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.155) |
2017年4月20日号
放送周波数帯域の権利を持つ放送事業者に対して落札金を分け与える事で、権利を返上させ、通信向けに競売するインセンティブ(報奨の意味)オークションが4月に完了した。この競売は複雑で、3つのステージに分けて行われた。
最初のステージは権利を売る放送局とその金額を決める競りで、これは安い金額が勝つ、リバース・オークションである。周波数帯域を返上する意思がある局は、その代償の金額を提示し、低い金額の局が勝つ。周波数帯域の権利を完全に手放すだけでなく、権利は維持するが、UHFからVHFに移動する事も可能である。第1回目のリバース・オークションは124 MHzを空ける事を目標に行われた。
リバース・オークションの金額に競売後の再編成のコスト等の経費を加えた金額が、第2ステージの通信事業者が帯域を競り落とすフォワード・オークションが成立するのに必要な最低金額になる。126 MHzの段階ではフォーワード’オークションが最低価格に達する事が出来ず、対象を114 MHzに減らした2回目のリバース・オークションが行われた。2回目、それに対象が108 MHzになった3回目も成立しなかった。
競売対象が84MHzに下げられた4回目のリバース・オークションの総額は第3回目の$400億から大きく下がり、$100億となった。フォワード・オークションはこれを簡単にクリアする$193億に達し、競売は成立した。実際に競売された周波数帯域はガードバンドを除いた70 MHzで、これを10ブロックに分け、さらにそれを416地域に分けた4160ライセンスであった。
50の通信事業者が最低でも1つのライセンスを落札した。3つ目のステージとして帯域割当を決めるオークションが行われ、インセンティブ・オークションはすべて完了した
リバース・オークションでは145局が周波数帯域を手放し、29局がUHFからVHFに動き、1局がV-HighからV-Lowに動いた。最も高い値段で権利を売りことが出来たのはTrinityのシカゴのWWTO局で、$30.4億を得た。2位はComcastのニューヨークのWNBC局で、$21.4億を得た。周波数帯域を手放しても、同じ地域の局のチャンネルを共有する事で放送を続ける事が出来き、WWTO、WNBC等の133局はチャンネル共有で放送を続ける意思表示をしている。
最も多くの金額を使った放送事業者はT-Mobileで1,525ライセンスを$80億で競り落とした。2位は、Dish Networkで486ライセンスを$62億で得た。すでに600 MHz帯を持っているAT&TとVerizonは積極的ではなく、AT&Tは$9.1億を使ったが、Verizonは競売に参加しなかった。
競売は完了したが、大変なのはこれからである。通信向けに70 MHzとガードバンドの14 MHzの合計84 MHzを空けるためにはチャンネルの再編成が必要になる。放送チャンネルは現在の50から36チャンネルに減り、再編成の為には957局がチャンネルを変えなければならない。この作業は39ヶ月をかけて行われる。
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