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放送周波数帯域の競売と4K放送 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.154)
2017年3月25日号

 9月の記事でテレビ放送の周波数帯域の競売に関して書いた。この競売は2回目、3回目も不成立であったが、対象帯域が84 MHz(14チャンネル分)に下がった4回目で成立した。4回目では放送局が周波数帯域権利を手放す額を決めるリバースオークションの額は$100億となり、108 MHzが対象であった3回目の$200億の半額に下がった。通信事業者がこれを競り落とすフォワードオークションでは$100億はすぐに超え、最終的に$196.3億で競りが終わった。

 実際に通信事業者が競り落としたのはガードバンド分を引いた70 MHzである。これを10 MHz(上り、下りで5 MHzづつ)に分けた7ブロックをそれぞれ416地域に分けた免許が競売された。しかし、競売はこれで完了した訳ではない。現在、帯域の割り当てを決める競りが行われている。全国共通の周波数帯域が欲しい等の特別な割り当てを希望する事業者がその権利を競っている。

 この割り当て競売が完了した時点(4月)から39ヶ月間をかけ、放送局の周波数帯域の再編成が行われる。これにより、競売された84 MHzが通信の為に空けられ、放送局は新たな周波数帯域で放送を始める。割り当て競売が完了すするまで、FCCからどの会社が放送免許を手放したかの報告は無いが、大手放送事業者のSinclair Broadcasting、Fox、Gray Television、Tribuneが幾つかの放送免許を競売した事を発表しており、Foxは競売で約3.5億の収入を得ると発表している。

 この競売は4K放送を可能にするATSC 3.0への移行にも影響を与える。ATSC 3.0は既存のATSC 1.0とは後方互換性が無いので、移行期間中は1.0と3.0の両方で放送する必要がある。しかし、アナログ停波後の競売、そして今回の競売により帯域の余裕は無く、アナログからデジタルの移行時の様に1つの放送局に2つのチャンネルを与える事は出来なく、移行の義務化は不可能になる。

 FCCは2月にATSC 3.0への移行は放送局が自主的に行うとし、そのための規制案を全員一致で可決した。この案を基にこれから規制が作られる訳だが、移行は放送局の選択であり、ATSC 3.0の採用は義務にはならない。しかし、ATSC 1.0での放送は義務である為、3.0で放送を始める放送局は、ATSC 1.0での放送も引き続き行っていく必要がある。その為に新たなチャンネルは与えられなく、ATSC 3.0で放送する局は、同じ地域の他局と契約し、そのサブチャンネルで放送する事になる。

 ATSC 3.0で放送する局は、3.0に対応したチューナ搭載のテレビが普及され、1.0での放送が不要になるまでの期間は他局のチャンネルの一部を借り、1.0での放送をする事になる。だが、テレビにATSC 3.0対応のチューナ搭載も義務化しない可能性もある。また、多チャンネルサービス事業者に対してもATSC 1.0での放送を再送信する義務はあるが、ATSC 3.0での放送を再送信する義務は無い。この為、ATSC 1.0から3.0への移行は長い期間がかかるか、最悪の場合は、2つの方式での放送のままの状態が続く事になる。ATSC 3.0での放送を開始する放送局は、他局のチャンネルを長い間、借りる事を強いられる。


「from USA」 のバックナンバーはこちらです。



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